リテール大革命

バーチャルYouTuberが接客 創業127年の老舗・萩原が挑む、新世代の集客術(2/3 ページ)

» 2019年06月30日 11時00分 公開
[広田稔ITmedia]

親子連れが集まり楽しそうに話す姿も

 それでは実際の本番を迎えてどうだったのか? 結論としては、初めての試みながらも、話せた多くの客にお店を印象付けられたと感じた。

 ジ アウトレット広島は、2階にアパレル関連のアウトレット、1階に映画館やゲームセンター、飲食店、お土産屋などが店舗を構えるレイアウトだ。はぎもの舎は、このうち1階の「なみのわガレージ」と名付けられた、暮らしや「こと」のスタイルを提案するエリアに存在している。店の目の前には、おもちゃ屋の「トイザらス」があり子どもたちも多く通りかかる立地だ。

 みみたろうさんの出演時間は13〜15時の2時間。午前中にアウトレットを回り、ちょうどフードコートや飲食店で食事を終えたお客がモール内を回る時間帯に合わせている。

 筆者が居合わせた6月9日の初週は、モール自体の来場者が多かったこともあり13時前から2組の親子連れが待ち構え、さらに2組ほど待機ができていた。その後、数分客足が途絶えて呼び込むことが何回かあったものの、2時間のうち1時間45分ぐらいはみみたろうさんの前にお客さんがついていた。

子どもたちの心をつかむVtuber

 子どもによっても、恥ずかしがって逃げる子もいれば、積極的に話しにきてみみたろうさんと同じポーズをとるなど反応はさまざま。通路を通りがかっている人も、ポスターや実際に画面に向かって話しているところを目にし、かなり気になってのぞき込んでいた人もいた。中にはみみたろうさんの姿を見て、「マツコ会議で見た」と近づいてきてくれた人もいた。

 実際にやってみて重要だと感じたのは、話してもらうまでの動線だ。バーチャルYouTuberによる店頭集客はまだほとんど事例がないため、多くの人が「人型のデジタルサイネージかな?」と遠巻きに見てしまう。実際に話してみると、非日常的な体験で驚きがあるものの、ディスプレイの前に来てもらうまでのハードルが意外と高い。

 「手を振ったら振り返してくれますよ」と呼びかけるなど、なるべく最初のハードルを低くすると、親のほうから「話せるんだって、行ってみる?」と子どもを誘うこともあった。

 また、遠隔出演はどうしても見えないところが出てきたり、今回の缶バッジのように物理的に何かを渡したりできないため、現地での専属スタッフが必要になる。商品に興味を持ってくれそうなお客さんをスムーズに案内するためにもリアルのスタッフは必須だ。

 出演者のトークスキルも重要だ。話す相手がアバターなら誰でもいいというわけではなく、実際に話して面白いと感じてもらわなければいけない。みみたろうさんは、かわいいのにやたらツッコミがうまいというギャップが面白い。

 そもそもVTuber、特に生放送を中心とする“バーチャルライバー”は、日々の生配信で投稿されたコメントに対して面白く反応を返すということを繰り返しており、そうした点で見知らぬ人も多くくる接客はうってつけだ。今回のみみたろうさんも、会話に限らず臨機応変に対応していた。

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