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Workdayのファイナンスにクラウド版Informatica、壮絶な“初物導入の舞台裏”全部見せます怒濤の5並列プロジェクトを振り返る(4/8 ページ)

» 2019年07月04日 12時00分 公開

オープンなコミュニケーションで醸成された「一緒にやりましょう文化」

 本プロジェクトの良かった点として多くのプロジェクトメンバーが挙げていたのが、ユーザー、パートナー、ベンダーが互いに協力し合いながらプロジェクトを進めていく「一緒にやりましょう文化」だ。中野氏はこうした文化を根付かせるために、「立場を超えて情報を完全にオープンにすること」を心掛けたという。

 「自分にとって都合が悪い情報も含め、完全に情報をオープンにすることでメンバーや周囲の方々の信頼を得られたと思います。それに、都合の悪い情報をいくら隠したところで、どうせ後でバレますからね。ギリギリでやっているのでごまかす余裕もない。それなら、初めからフルオープンにした方がいいという考え方です。

 例えば今回のプロジェクトでも、初めに業務部門の方々に『ERPを導入しても皆さんの仕事は楽になりません』と宣言しました。現場レベルでの生産性向上を最優先させてしまうと管理の粒度が上がり、現状を大きく変えるERPへの統合はほぼ無理ですし、スタッフのユーザビリティを最優先すればぶこつなUIやUXがネックになる。

 ERPは良くも悪くも経営のためのシステムであり、海外に向けて事業を展開する企業が正確な情報を得るための仕組みなんです。業務現場の方からすれば、理解し難い点もあったかと思いますが、そういう部分も含めて極力オープンなコミュニケーションを心掛けました。理解されたかどうかは別として、そこを曖昧にするのは将来的にマイナスだと思いました」(中野氏)

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 もう1つ同氏が心掛けたのが、「相手の専門性に対して敬意を払う」ことだったという。相手の専門分野について話すときは、「相手はその道の専門家なのだから、きっと自分より詳しいはずだし、その分野に関しては全力を尽くしてくれるに違いない」という前提で会話をする。そうして払った敬意は必ず相手にも伝わるため、逆に相手も自分の専門性を尊重してくれるようになる。

 こうしたコミュニケーションを、プロジェクトのリーダーである中野氏が自ら先頭に立って実践することで、プロジェクト全体の一体感を醸成していったという。

 「チーム全体の空気を作るためには、やはり最初に誰かがファーストペンギンとして、チームのあるべき理想像をしっかりと示した上で、先頭に立ってチームの雰囲気を作るための行動をとっていく必要があると思います。今回のプロジェクトでは、私自身が意識してそうした行動をとったつもりですが、実際にうまくいったかどうかは、正直なところよく分かりません」(中野氏)

 これに対して、クックパッドのプロジェクトメンバーからは「プロジェクトの目的やゴールについて、初めからきれいごと抜きで本音で話してもらったおかげで、余分なコミュニケーションコストがかからずに済みました」という声が挙がったほか、パートナー企業側のメンバーからも「常に本音ベースでコミュニケーションが取れたので、例えば一緒になってクックパッドの決裁者の理解を得られる方法を考えるなど、かなり密な連携を取れました」と高く評価する声が多かった。

 なお、今回のWorkday導入プロジェクトでは、外部のコンサルティング企業(PwC)からプロジェクトマネジメント専門のコンサルタントも招いている。このコンサルタントと中野氏の間のコミュニケーションも本音ベースで行えたため、早期に信頼関係を築き上げることができたという。

 「私は企画段階には携わっておらず、導入フェーズから参画してプロジェクトマネジメントを担当したのですが、中野さんとは常に密接にコミュニケーションを取りながら、同じ意識でプロジェクトを進められました。

 お客さまの中には、われわれ外部の人間と社内の人間に言うことがまったく異なり、困惑させられることもあるのですが、そういうケースと比べれば、今回ははるかに強固な信頼関係を築き上げることができたと思います」(PwCのプロジェクトマネジメント担当)

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