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» 2019年07月04日 12時00分 公開

Workdayのファイナンスにクラウド版Informatica、壮絶な“初物導入の舞台裏”全部見せます怒濤の5並列プロジェクトを振り返る(2/8 ページ)

[吉村哲樹, 後藤祥子,ITmedia]

カットオーバーに至るまでに直面した数々の難題

 このプロジェクトは、一般的なプロジェクトマネジメントの常識に照らし合わせると、かなり過酷な条件がそろっており、成功に導くためには幾つもの難題をクリアする必要があった。

 ここでは、普通のやり方では到底完遂できないと思われたプロジェクトを成功に導くために、関係者が当時、それぞれの立場で考えたことや、実際に行動したことについて振り返った内容を紹介する。

「国内“初物”製品」をかつぐリスクとメリット

Photo クックパッド コーポレートエンジニアリング部の部長を務める中野仁氏

 一般的に、日本国内でまだ導入事例がない海外製パッケージ製品を導入する際には、さまざまなリスクが付きまとう。それでもあえて、クックパッドがWorkdayの採用に至った経緯について、中野氏は次のように説明する。

 「今回、製品を選定する際に掲げたコンセプトは極めてシンプルで、『グローバルでスケールする』『多国籍企業としてスケールする仕組みを作る』ということでした。そのためにどんな仕組みを構築すればいいかを考えたのです。その結果として行き着いたのが、『多数のグローバル企業で採用されているデファクトスタンダード製品を使う』という基本方針でした。ごく簡単に言えば、『ガートナーのMagic Quadrant(市場で競合するプレーヤー各社を相対的に位置付けて提示するガートナーの代表的なリサーチ方法)の右上(市場のリーダー)にマッピングされている製品を使う』ということです。

 とはいえ、それだけでは『本当に使われているのか』『効果を上げているのか』が分かりませんから、実際にいろいろな大手外資系企業を訪問し、どんな製品を使っているかを聞いて回りました。その結果、多くがWorkdayを導入していることが分かり、採用に至りました。

 導入に当たっては、『シンプルな構成にすること』に強くこだわりました。当初から、HRとFinanceは1つのプロダクトを選ぶことを決めていました。事業規模からも予算や人員についての制約がある以上、運用までを考えると、複数プラットフォームをまたぐ連携構築や運用負荷を許容できないと予測していたからです」(中野氏)

 とはいえ、当時も現在も、国内でWorkdayの財務管理システム(Finance)を導入した例はない。外資系パッケージ製品の「国内初物」となる導入には、製品のローカライズや品質面の懸念も含め、さまざまなリスクが伴う。

 この点について中野氏は、「今回はとにかく『あるべき姿』を追求することを優先させたので、国内で実績があるかどうかはあえて度外視しました」と述べる。その結果、初物導入に付き物の数々のトラブルには見舞われたものの、最終的にはクックパッドが今後グローバル企業に成長していくために必要な基幹システム基盤を構築できたという。

 一方、パッケージベンダーの立場からすると、今回のプロジェクトのように国内でまだ導入実績のない製品を採用する企業は、極めて貴重な存在だと話す。

 「Workdayは、日本国内では主に人事システムとしての採用例が多いのですが、それでも企業の人事部門が自ら率先してWorkdayの採用を進める事例はめったにありません。

 人事部門は日々のタスクに追われている方が多く、既存の業務を回すことに注力している傾向が強いので、Workdayのようなパッケージ製品を入れて業務のやり方を大胆に変えるような取り組みには消極的になりがちです。従って、私たちが『ルーティン業務を効率化して、もっと人事本来の戦略的な仕事に注力できるようにしましょう』と提案しても、なかなか乗ってきてくれません。

 社内では、『われわれの提案に乗ってくれる企業を探そう』といつも話しています。そういうチャレンジングな精神を持った方を積極的に探しに行くか、あるいは育成していかないと、実績に乏しい製品を導入していただくのはなかなか難しい面があります」(Workday:導入担当者)

 今回のように、国内で“導入事例が皆無に等しい製品”の導入に挑むには、提唱者の「強い思い」が何より重要になってくると中野氏は述べる。

 「よくある話ですが、経理部門も、日々の伝票処理と決算を締めること、いわゆる財務会計領域に精いっぱいで余力がない。そうした状態が長く続くと、それが『財務部門としての仕事の全て』だと思ってしまいがちなようです。新たな取り組みに対しても保守的な傾向が強くなる。

 これは経営レベルに起因していて根が深い。コーポレート部門をただのコストとして考え、人員や予算を渋り続けた結果、そうなることが多いようです。事業規模の拡大に対して応急処置的に社員の増員とアウトソースで対応した結果、オペレーションに忙殺され、非効率な業務が温存されたとも言えます。ましてやそこに、国内初となるパッケージ製品を導入するとなれば、なおさら慎重になってしまいます。

 また、IT投資自体を各部門に委ねているケースも多い。ただでさえコストとして考えられている上に、人員と予算は限られていて、さらにシステムについては専門家ではない。そんな人事・財務部門が自己防衛的に行う投資です。そこに、企業全体と中長期的視野に基づいた投資を行うように言っても無理があります。

 当時、とある企業の財務部長の方とお話しする機会があったのですが、とにかくアグレッシブで熱い思いを持った方なんですね。その方は、自社にWorkdayの経理システムを導入することを強く主張していたのですが、経営会議で却下された結果、何と会社を辞めてしまったそうです。これぐらい『強い思い』を持って挑まないと、初物製品の導入や、人事や経理などの業務変革は実現できないんだなと、あらためて実感したことを覚えています」(中野氏)

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