ITの力を使うことなしに、ビジネス課題を解決するのがますます難しくなっていく――。そんな時代がやってきた今、これまで使ってきた古いシステムを刷新し、新たな技術やサービスを使って企業の競争力を上げていこうとしているのが、「カップヌードル」でおなじみの日清食品ホールディングス(以下、日清食品HD)だ。
業務を改善するためのプロジェクトでは、社員が長年、慣れ親しんできた業務フローを見直し、本質的な改善につながる仕組みを新たに構築する必要がある。そこには「これまでの常識を疑ってみる目」や、社内外の情報を幅広く収集する「フットワークの軽さ」、変化に対応できる「柔軟なマインド」が不可欠だ。
日清食品HDは、こうした力を持つリーダーをどのように育ててきたのか――。同社でCIO(Chief Information Officer:ITとビジネスをつなぐ役割を担う情報システム部門担当役員の名称)を務める喜多羅滋夫氏のインタビュー後編では、変化の時代に必要とされるリーダーの育て方について聞いた。
――(聞き手:編集部 後藤祥子) 2018年9月、経済産業省が「2025年までに複雑化、ブラックボックス化している古いシステムを刷新し、新たな技術を活用したシステムに置き換えなければ、日本企業は市場競争で負けることになる」とする報告書を発表し、世の中に衝撃が走りました。ITがビジネス課題の解決に不可欠なものとなった今、日清食品HDではどのようなIT活用のビジョンを描いていますか。
喜多羅氏 いわゆる「2025年の崖」問題ですね。私たちは、新しいERPシステムを導入するのと連動して、2016〜2017年にかけて社内に残っている老朽化したシステムをなくすためのプロジェクトに取り組んできました。その結果、社内のシステムマップは、かなりシンプルなものに変わりました。しかし、私たちの目的は、単に古いシステムを撤廃して新システムに移行することではありません。
ITを使った改革を推進していく中では、これまで皆が「当たり前にやるべき」と思ってきた仕事そのものを見直して、「いかにして一人ひとりの生産性を高めていくか」が問われます。業務案件に最新のテクノロジーをマッチングさせ、さまざまな経営課題を解決していくという取り組みを、今後も継続していかなければなりません。前回もお話しした通り、会社の売上と利益の向上に貢献する、競争力のある情報プラットフォームの構築を目指しているわけです。
これまでの仕事の延長線上で「こんな帳票を追加しました」「こんなデータも見えるようになりました」――といったような社内サービスを展開しているだけだと、生産性は向上しません。一般消費者の手元にあるテクノロジーは、企業内システムの更新をはるかに超えるスピードで日々進化しています。スマートフォンを利用することが当たり前となり、日常的にさまざまなアプリが使われ、高速なモバイル通信環境も整うなど、多くの人が最新のテクノロジーに慣れ親しんでいます。企業も、その世界と同じような方法で、ITを活用したビジネス変革に取り組む必要があります。
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