「二段階認証うんぬん」発言から読み取れる、セブンの危機的状況スピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2019年07月09日 08時05分 公開
[窪田順生ITmedia]

社会や顧客を無視するパターン

 個人的には、これは非常にマズい事態だと思っている。実は「想像力の欠如」というのはここ最近、セブン-イレブン周りで顕著にあらわれてきていて、それがいよいよ誤魔化しきれないほど重症化してきたという見方もできるからだ。

 この「病」を象徴するのが「24時間営業問題」の対応だ。ご存じのように本件は、バイト不足から24時間営業ができないと音を上げたFCオーナーに、セブンのFC本部がコワモテ対応をしたことが、世間の批判を浴びたことに端を発している。

 当初、セブンは「24時間営業継続」を譲らなかったが世論に押される形で、時短営業の実証実験をすると発表。しかし、新社長となった永松文彦氏が就任会見で「(売り上げなどが)かなり厳しくなるというのがある程度読めているので、それを明確にするためにテスト(直営店での実験)をやっている」(ダイヤモンドオンライン 2019年4月5日)と口走るなど、「今のご時世、疲弊するFCオーナーに24時間営業をゴリ押ししても社会の理解は得られない」という視点がゴソッと抜けてしまっているのだ。

セブン-イレブンの想像力は本当に大丈夫なのか(写真提供:ゲッティイメージズ)

 筆者の経験上、このように想像力が欠如した組織というのは往々にして、ドミノ倒しのように不祥事が続発する。というわけで2月の段階で、僭越(せんえつ)ながら『ダイヤモンド・オンライン』の連載で以下のように「警告」をさせていただいたのだ。

 『「24時間営業」も「ドミナント戦略」も、フランチャイズ本部からすれば、データに裏打ちされた戦略なのだろう。しかし、人口減少が急速に進む中で現場の疲弊に耳を貸さず、盲信的にこれまでの戦略をつき進むというのは、戦局が悪化しているにも関わらず、その現実から目を背けて、「員数合わせ」で特攻を命じていた日本軍の大本営と何も変わらない。いくら王者・セブン-イレブンといえども、現場を無視した経営では、いずれ必ずしっぺ返しを食らう』(2019年2月21日)

 「員数合わせ」とは、とにかく数字の帳尻さえ合えば問題なしという考え方のことであり、かの評論家・山本七平氏が、旧日本軍の崩壊した要因としたことで知られている。

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