「二段階認証うんぬん」発言から読み取れる、セブンの危機的状況スピン経済の歩き方(2/5 ページ)

» 2019年07月09日 08時05分 公開
[窪田順生ITmedia]

考えられる3つのパターン

 あの「二段階うんぬん」発言からは、現在のセブン&アイ・ホールディングスという組織を蝕んでいる致命的かつ構造的な問題が垣間見えてしまうからだ。それは、「想像力の欠如」である。

 通常、今回のようなケースでは、会見を催す前に記者からどんな質問が飛んでくるのかと予想して、経営者らが語るに適切な回答を準備する。いわゆる、想定Q&Aだ。

7payは想定Q&Aを準備していたのか

 不正アクセスならば当然、質問はセキュリティに集中する。ということは、他サービスではデフォルトになっている「二段階認証」に関するQ&Aは必要不可欠である。しかし、小林社長はあのリアクションだった。ということは、考えられるのは以下の3つの可能性である。

(1)そもそもQ&Aを用意していなかった

(2)Q&Aは用意されていたが、そこに「二段階認証」に関する回答がなかった

(3)Q&Aに「二段階認証」に関する回答はあったが、小林社長が見落としていた

 どのパターンだったとしても、「想像力の欠如」が招いていることがお分りだろうか。

 (1)だとすれば、スマホ決済という、不正アクセスのリスクが常につきまとうサービスを始める事業者としては、あまりにもお気楽すぎる。(2)も同様で、Q&Aを作成する広報や経営企画などの人々が、「世間が何を知りたがっているのか」ということまでイマジネーションを働かせていないということだ。(3)の場合、一見するとヒューマンエラーのように錯覚をするかもしれないが、小林社長の「失言」よりも、そのミスを周囲がフォローしなかったことのほうが問題で、やはりこれも個人の問題ではなく、「組織」として危機意識が乏しいと言わざるをえない。

 つまり、どこに転んでも「想像力の欠如」という問題が鮮やかに浮かび上がるのだ。

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