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» 2019年07月10日 07時00分 公開

繁盛店から読み解くマーケティングトレンド:銀座進出した無印良品 高級百貨店ひしめく中で輝く深いワケとは? (2/4)

[岩崎剛幸,ITmedia]

店内で「ずっと椅子に座っていただいてもOK」

 どうやって顧客に上の階の売り場に上がってもらうか。多層階型の小売業には試行錯誤してきた歴史があります。百貨店が回遊性を高めるため取ってきた代表的な対策に、最上階に「ファミリーレストラン」を配置して、まずは食事をとりに上に上がってもらい、そこから下にお客さんを流すという「シャワー効果」があります。上の階に集客力のある施設を導入するというものですね。最近ではファミレスの代わりに上層階に催事場をおいたり、ポケモンセンターのようなアミューズメント施設を誘致するケースもありますが、いずれもシャワー効果を狙ったものです。使い古された手法ではありますが、今も効果的でよく取られていると言えます。

 無印銀座店の場合、上層階にあるのはホテルです。加えて物販スペースの最上階となる6階はアートスペースとカフェ(夜はバー)、そしてMUJI HOTELのフロントスペースです。モノも売らないしファミリーレストランでもありません。しかしそこには無料で座れる椅子やソファが置いてあり、いつでもそこに来て休憩できるようなスペースになっています。

photo 上層階に位置するMUJI HOTEL GINZA(良品計画提供)
photo 上層階にはサロンスペースも(良品計画提供)

 無印銀座店の有田明央店長は「ずっと(来店客に店内で)椅子に座ってもらっても、私はいいと思う」と言い切ります。実際、こうした工夫から、無印銀座店は来店者数が好調なだけでなく、「有楽町店の時は仕事帰りのOLが多かったのが、こちらでは買い物メーンで年齢層も高めの客も増えてきた」 (有田店長)と、客層が拡大するようになったとのことです。回遊性向上の工夫から、20〜30代くらいの既存の「無印良品ファン」に加えて、銀座という立地もあり、周辺の老舗百貨店に足を運んでいたような、比較的裕福で上の年齢層の客も昼間に来るようになったとみられます。

「売らんかな」の百貨店イベントと「リピーター狙い」の無印

 無印銀座店の客層が広がったのは、なにも立地やシャワー効果だけの影響ではありません。地道な日々の販促効果も奏功しているようです。例えば、同店ではさまざまな顧客創造のための販促に力を入れています。これは一見、従来の百貨店などの小売りが取り組んでいるイベントと似ていますが、その手法はちょっと違うようです。

 従来の百貨店では、集客のための販促活動と言えば「売らんかな」の傾向が昨今、強くなっている印象を受けます。夏のビッグバーゲンなどの割り引きセール、福袋販売などの初売り、オーダースーツフェアなど、どちらかと言えば「まず商品を売り込む」要素が強いイベントが多いようです。こうした施策は直接的な効果が高い分、顧客を食傷させる危険性もはらんでいます。百貨店側も気付いてはいるのですが、なかなかやめられないものです。

 無印銀座店ではまず来店客を増やし、リピートしてもらうことにフォーカスしています。銀座に縁のあるクリエイターなどに、店内に小物などの屋台を出店してもらう「つながる市」を開催したり、子供向けの「父の日・母の日ワークショップ」を企画。大人向けには風鈴の絵付け教室、時にはアート系のトークショーを開催するなど、年間300件ほどのイベントを開催しています。

 これらには直接物品を販売しないタイプの物も少なくなく、必ずしも直接売り上げに直結するものではありません。有料のワークショップもありますが、同店によると、基本的に材料費程度の参加しやすい金額とのことです。あくまでも顧客に楽しんでもらうためのイベントやワークシップという位置付けで、「売り」を前面に出した販促ではなく、共感型、体験型の販促に力を入れているのです。

 無印銀座店のイベント施策は、従来型の売り上げ先行型のプロモーションから脱却して、まずは継続して顧客を集め続けようとする取り組みとも言えそうです。

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