銀座進出した無印良品 高級百貨店ひしめく中で輝く深いワケとは?繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(3/4 ページ)

» 2019年07月10日 07時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

苦戦強いられる百貨店

 日本の百貨店は苦戦を強いられるようになっています。上記のようなマンネリ化したプロモーションが続き、顧客に価値を提供できない店が増えた点もあると言えそうです。

 百貨店売上高は1990年の9兆円をピークに年々減少し、2016年には6兆円を割り込み、減少傾向にあります。

photo 全国の百貨店の売上高推移(日本百貨店協会の「全国百貨店売上高」をもとに筆者作成)

 全国の地方百貨店を中心に閉店が相次ぎ、18年だけでも少なくとも6店舗、19年に入ってからも三越伊勢丹が相模原や府中など3店舗の閉店を決定するなど、19年から20年にかけて10店舗以上の百貨店が全国から姿を消すことになります。

 今はインバウンド消費に支えられて売上を維持している都心型百貨店もありますが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックが終了して以降はどこまで維持できるのか。インバウンド売り上げを維持し続けられる確信をもっている店は1社もないのではないでしょうか。

 これは百貨店だけではなく、GMSと言われる総合量販店も同じような状況です。イオンやイトーヨーカ堂をはじめとするGMSは総じて厳しい状況が続いています。

 小売りの「総合的な品ぞろえ」そのものに限界がでて、もはや総合店は生き残れないのではないかという意見もあります。現にイトーヨーカ堂では、総合店の看板をおろして食品などに特化した店を作るなど、総合店の方向性を見直しています。

 総合的な品ぞろえでは、興味・関心が多様化してきている顧客の満足度は低く、突出した特徴が出ないため、集客につながらないからです。

 では無印銀座店が作り上げている、一見「総合的な百貨店風品ぞろえ」の銀座店は、従来型の百貨店などと何が違うのでしょうか。展開している商品のジャンルの多さだけ見ると、百貨店の総合的な品ぞろえと何ら変わらない気もします。

「無印ブランド」という世界観

 しかし、無印銀座店はまず、「無印ブランド」という“世界観”の統一された商品群を取りそろえているという強みを持っています。銀座という新天地にあっても、広い店舗全体を無印の世界観で統一し、既存の無印ファンを確実に誘客することが可能です。他の老舗百貨店があまり持ちえない点です。

 しかも、多層階で従来の百貨店が取ってきた「シャワー効果」の施策を、ホテルやバーといったユニークな形でよりブラッシュアップして取り込みました。さらに、売りこまない体験型のイベントやワークショップと言った、「コト消費」系イベントで既存百貨店と差別化を図り、顧客の回遊性や来店頻度を上げているのです。

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