従来から大手金融機関などがファクタリングサービスを提供してきたが、これらは中堅企業向けだった。毎月1億円以上など、大型のファイナンスが中心だ。一方で、いわゆる街金業者がやっているファクタリングもあるが、「運営体制に問題があって、売掛先にはバレませんといいながら連絡したり、社長に個人保証を求めたり、20〜30%の手数料を取ったり」(武田氏)する業者も散見されるという。
100万円、200万円の短期の資金需要に対して、安心して利用できるものはこれまでなく、そこを埋める形でOLTAはサービスを展開している。
OLTAのクラウドファクタリングは、申込みがネットで完結。最短24時間後には入金が完了し、手数料も2〜9%と低く抑えている。「早い、簡単、安い。オフィスにいながら資金調達できる。これは画期的だと言われる」(OLTAの澤岻優紀社長)
ファクタリングをオンラインで行う手法は海外では先行して始まっていた。しかしここに来て日本で同様のサービス展開が可能になったのは、金融情報サービスの広がりだ。
「日本でも、データを取れるチャネルが増加してきた。銀行APIなどが先行して、会計ソフトも広まりつつある」(澤岻氏)
OLTAのクラウドファクタリングでは、請求書を買い取る利用企業の与信をどうやって行うかがポイントになる。中堅以上で一般的に与信に使われる帝国データバンクの評点がついていないからだ。
ここで財務データを活用した。約20万社の法人データに基づいて与信のスコアリングモデルを構築。決算と入出金のデータに基づき、1カ月後の短期キャッシュフローを予測する仕組みを作り上げた。データに基づいたスコアリングモデルは、10年前に新銀行東京が積極的に用いて不良債権の山を築いたことが思い出されるが、短期融資の場合は事情が違うと澤岻氏は説明する。
「長期融資の場合、その会社が信頼できるかが重要だが、短期の場合1カ月後に倒産するかどうか、不払いがあるかどうかがポイント。データとして重要なのが入出金明細。偽造が難しい」
このモデルをもとに、大量のファクタリングを行うことで貸し倒れ率が期待値に収れん(大数の法則)することを狙うのがOLTAのビジネスモデルだ。「競争優位性は与信だ。高めるためには試行回数がものをいう。大数の法則をやりきる」と澤岻氏。
現在の貸し倒れ率は公開していないが、一定の値に収れんしてきたという。
OLTAは自身をテクノロジーとデータの企業と位置づけており、事業をスケールさせるためにクラウド会計事業者や地方銀行と提携を進めていく方針だ。6月に発表したクラウド会計サービスのfreeeとの提携はその第一歩となる。
クラウド会計などからデータを取得し、与信の精度を高める。地銀と組んで、与信情報を提供し、ファクタリングに必要な資金自体は地銀が提供する形も構想している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング