7月に入ってから、かんぽ生命の不正事件、吉本興業の闇営業問題と、企業のトップによる記者会見が世間を騒がせています。
かんぽの不正問題は以前から指摘されていたにもかかわらず、日本郵便の横山邦男社長は「最近知った」と回答。吉本興業の岡本昭彦社長も、指摘されたパワハラ発言について「場を和ませるための冗談」と説明するなど、「いやぁ〜、それ堂々と言っちゃったらアウトでしょ」という言動を繰り返しました。(かんぽの会見についてはこちらに詳細を書いたので、ご興味ある方はどうぞ)
ふむ。いったいなぜ、そろいもそろって“えらい人”たちの記者会見は「ダメダメ」なのでしょう。どちらのトップもタイプこそ違えど、不誠実。どちらの会見も、「上と下」の断絶ばかりが目立ちました。
私はこれまでたくさんの企業を取材させていただきましたが、問題を抱える会社は例外なく上と下が断絶し、そのことにトップは1ミリも気付いていません。「権力」、そうです。権力の呪いが人をそうさせるのです。
「権力は人を堕落させる」。国や文化を超えて古くから受け入れられてきたこの言説は、一般の人々が日常生活での経験をもとに構成した「しろうと理論」です。
そこで世界中の哲学者や心理学者たちが、権力が人に及ぼす影響を科学的に実証しようと試みたところ、「人がしばしば自分でも気付かないうちに権力の影響を受け、その影響力が極めて強力かつ広範囲にもたらされる」という、呪いのような事実が明かされました。
特に、権力の働きがシステマチックに埋め込まれた会社組織では、権力者の言動は上司部下関係のみならず、関連する団体や組織、一般社会にも影響を与えます。とりわけ「ウチ」と「タテ」が優先される日本の組織は権力の独占が起こりやすい。
意思決定の特権は一部の権力者に占有化され、権力者がどんなに愚かな振る舞いや決断をしようとも、周りはそれに黙従せざるを得ない非対称の人間関係が生まれがちです。コンプライアンスという概念が、日本組織に根付かない理由でもあります。
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