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» 2019年07月26日 07時00分 公開

河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」:吉本、かんぽの炎上会見に見る「組織の病巣」 なぜ“上下断絶”が生まれるか (2/4)

[河合薫,ITmedia]

 それは、権力者が「他者からの干渉」を免れることを容易にし、普通だったら「理性」や「謙虚さ」が壁になり、人前に決してさらすことのない丸裸の欲望を無節操に繰り返す「自由」を与える、ということ。

 ですから、悪態を暴かれたトップは「自分の何が悪いのか?」が分からない。「丸裸にされた欲望」を制御するスイッチがまひしているので、性懲りもなく悪態をさらし続けます。彼らは組織内でもつ権力を、組織のためではなく「自分のため」に使い、自己正当化します。「会社のため」「キミのため」というウソを、「自分のため」に平気でついてしまうのです。

トップの「トランプ化」を助長する“絶対感”

 何だか書いているだけでうんざりしてしまうのですが、もちろんそんなトップたちも、昔は仕事に一生懸命で、部下たちから慕われる上司だったに違いありません。一目置かれる存在で、それなりの結果も出してきた。だからこそ階層組織のトップに上り詰めた。

 ところが、いつからか変わってしまったのです。うかつにも権力で生じる「絶対感」に酔いしれ、堕落し、幼稚化し、組織を腐敗させたのです。

 ひとたび「絶対感」がもたらす恍惚(こうこつ)感を味わってしまうと、権力の呪いから抜け出すのは極めて困難です。絶対感は「共感性」を果てしなく低下させるため、どんなに周りに迷惑を掛けようともおかまいなし。身勝手さはエスカレートし、無礼で、倫理にもとる行動を取り続けます。

 例えば、「約束の時間に遅れそうだからスピード違反をしてクルマを走らせる」という行為について、「絶対感が高い」グループと「絶対感が高くない」グループに分けて評価をさせたところ、絶対感が高いグループに属する人たちの多くが、「自分がスピード違反する行為」を「仕方がない」と回答。その反面、同じ行為を他者がやったときには、「法律に違反するなど許せない行為だ!」と厳しく非難しました。

 さらに、絶対感は「情報を処理する能力を著しく短絡化させる」という困った思考メカニズムを強めることも、いくつかの研究によって明かされてきました。

 思考が短絡化すると、理詰めで正しい答えを熟慮する過程を経ず「自分の直感」で物事を判断します。どんなにそれがリスクの高い決断でも、驚くほど楽観的。絶対感は「自分は極めて有能で特別な人材である」という自己イメージを増幅させ、本人は「スッバらしい決断! こんなことオレ様にしかできねーぜ!」と信じ込んでしまうのです。

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