高齢者ドライバー対策、「専用免許」では解決しない自動ブレーキ搭載車両(1/3 ページ)

» 2019年07月26日 06時00分 公開
[日沖博道INSIGHT NOW!]
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日沖博道氏のプロフィール:

 パスファインダーズ社長。25年にわたる戦略・業務・ITコンサルティングの経験と実績を基に「空回りしない」業務改革/IT改革を支援。アビームコンサルティング、日本ユニシス、アーサー・D・リトル、松下電送出身。一橋大学経済学部卒。日本工業大学 専門職大学院(MOTコース)客員教授(2008年〜)。


 日本政府は「自動ブレーキ搭載車両のみ運転可能」という高齢者専用免許案を真剣に考えているらしいが、大多数のお年寄りにとって現実的な選択肢にはならないだろう。むしろニュージーランドのような「アメとムチ」の組み合わせこそが合理的で納得性が高く、しかも実際的な施策といえる。

 日本では70歳以上の高齢ドライバーに対しては「高齢者講習」が運転免許更新時に義務付けられているが、「講習だけでは無意味」という意見が圧倒的多数派だ。75歳以上についてはさらに認知機能検査(アルツハイマー型認知症のスクリーニング検査)が加えられたが、検査合格でも事故を起こすドライバーが続出し、検査の妥当性自体を疑問視する声が根強い。

 相次ぐ高齢者ドライバーによる悲惨な事故が急増している事態を受け、政府は高齢者に対し免許返納を勧める一方で、最近では「自動ブレーキ搭載車両のみ運転可能」という高齢者専用免許案が政策案として有望視されているらしい。

 しかしそれが現実的な方策なのかというと甚だ疑問である。自動ブレーキ搭載車両に買い替えるということは百数十万円から200万円の新たな投資を余儀なくさせるものである。年金を主たる収入の柱としている高齢者家族が100万円を軽く超える出費に踏み切れるだろうか。おそらく踏ん切りが付かないまま、中には事故を起こしてしまうケースも少なからず生じよう。

 もっと現実的な代替策はないのだろうか。ない訳ではない。

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