飲食や小売業界がハウスプリペイドの導入を進める背景には、10月に予定されている軽減税率制度の導入がある。これは、キャッシュレス対応を推進するために、決済額の5%を国がユーザーに還元する制度だ。POSレジなどの決済の仕組みを入れ替えるのを機に、ハウスプリペイドの導入を検討する店舗が増えている。
しかし、クレジットカード決済やSuicaなどの電子マネーではなく、自社店舗でしか使えないハウスプリペイドカードを導入する理由は何か? 客単価だけでいえば、クレジットカード決済者の客単価は現金より3割も高く、ハウスプリペイドカードを上回っている。
その理由は囲い込みにある。実は、地方のスーパーには苦い経験があった。大規模スーパーであるイオンが競合として進出してきたときに、特売セールによって対抗を考えた。ところが、イオンの強さは品ぞろえや価格だけではなかった。同社が推進する電子マネー「WAON」が最大の囲い込みの武器になったのだ。
「昔は卵99円の折込チラシで客が呼べたが、イオンがあると、みんな、チャージのインセンティブが付く日に、WAONにその月の食費分をチャージしてしまう」(林氏)
WAONは、チャージをすると200円ごとに1ポイントを付与するというインセンティブを用意している。さらに毎月10日には、ポイントが5倍になるというキャンペーンを恒常的に行っているのだ。このチャージインセンティブが、強力な囲い込みになった。
イオンに対抗して、またはイオンが来る前に、自社のハウスプリペイドを用意して、多くの金額をチャージしてもらえれば、顧客を囲い込むことができる。そのために、いかに効果的なチャージインセンティブを用意するかに知恵を絞っている。
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