クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

新型タントデビュー DNGAって一体なんだ?(前編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)

» 2019年08月05日 07時06分 公開
[池田直渡ITmedia]

 ダイハツ工業はDNGAによる商品の第一弾、タントを発売した。DNGAとは「Daihatsu New Global Architecture」であり、先行するトヨタのTNGAと限りなく同じ考え方だ。一言で言えば「コモンアーキテクチャー」であるが、そう言って分かる人はほとんどいないだろう。これはじっくり解説しなくてはならない。

DNGA第一弾となるタント

トヨタアライアンスのアジア戦略

 まずは背景だ。ダイハツは2016年8月に、資本の100%をトヨタが所有する子会社になって、上場を廃止している。これをトヨタによる支配、もっといえば資本による弱者蹂躙(じゅうりん)と受け取ると絵柄が見えない。むしろトヨタにとって、マレーシアを中心とするASEANで版図を広げつつあるダイハツが極めて魅力的であり、三顧の礼をもっても迎え入れたかったと考えるべきだろう。

2016年1月29日の記者会見でトヨタがダイハツの完全子会社化を発表。手を組む豊田章男社長(左)と三井正則社長

 現在、世界の自動車マーケットで成長期にあるのは中国、インド、ASEANであり、次世代と期待されつつ、思ったほどの速度で成長しないアフリカがそれに続くという構造だ。年間およそ1億台の新車が世界で売れている現状に対して、環境問題が大きく立ち塞がらなければ、向こう20年で市場規模は1.5倍の1億5000万台に増加するストーリーは荒唐無稽ではない。実際、中国単独で見ても、過去20年で3000万台のマーケットが生まれているのだ。

 つまり、これらのマーケットの覇者になれれば、荒っぽく考えて、3地域とも2000万台弱の伸び代を秘めているといえる。それらのシェア争いで圧勝を遂げたと仮定すれば、ダイハツがASEANで1000万台増、スズキがインドで1000万台積み足す可能性すらあるわけだ。つまり今のトヨタ単独(ダイハツは含む)の1000万台が、3倍に伸びる可能性を秘めている。それはもちろん相当に都合良く乱暴な皮算用に過ぎないが、そもそも皮算用すらないところに発展の可能性はない。ちなみに中国に関しては、トヨタ自社のブランドで取りに行くことになっている。ここでは後発ということもあって、うまく事が進んで500万台くらいなのではないかと思われる。

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