クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向
連載
» 2019年08月05日 07時06分 公開

新型タントデビュー DNGAって一体なんだ?(前編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)

[池田直渡,ITmedia]

軽自動車とAセグメント

 世界の自動車の中で、最小サイズのクルマをAセグメントという。代表選手はフィアットのパンダとフォルクスワーゲンのup!だろう。サイズを見ると前者は全長3655ミリ、全幅1645ミリ、全高1550ミリ。後者は全長3610ミリ、全幅1650ミリ、全高1495ミリだ。

フォルクスワーゲンのAセグメントカー「フォルクスワーゲンup!」

 日本の軽自動車は例外なく全長3395ミリ、全幅1475ミリで、全高だけが個別に違う。タントの場合1755ミリ(4WDは1775ミリ)。全長と全幅が全部同じなのは、軽自動車の規格サイズが、四輪で走る機械として常軌を逸して小さいサイズ規定だからだ。とにかく幅も長さもいっぱいまで使うしかない。エンジニアに、枠組みを設けずに「最小の実用車を作れ」といったとしたら、絶対に軽自動車のサイズでは作らない。逆にいえば、パンダやup!のサイズこそが自然な成り行きなのである。

【2019年8月8日 訂正:初出で軽自動車の全幅サイズが誤っておりました。お詫びし、訂正いたします。】

 世界のスタンダードに対して、軽自動車は長さも幅も20センチ強のハンデがある。狭いというだけならともかく、幅の差はサスペンションアームの長さにも影響を与え、走行性能の差になって現れる。自分の足で試してみれば分かるが、横揺れに対して、左右の踏ん張り幅が狭いと、より強い力で踏ん張らなければならない。クルマでいえば、重心高に対してトレッド(車輪幅)が狭いほど硬いばねを使わなくてはならなくなって、乗り心地が悪くなる。

 だから本来は経産省と国交省が手を携えて、軽自動車をグローバルスタンダードサイズに合わせるべきだった。それこそが日本の自動車産業の強みを世界で発揮する最良の方法だったのだ。なぜならば軽自動車の「良品廉価」の技術は、世界的に見ても圧倒的であり、だからこそフォルクスワーゲンはスズキとの提携を熱望したのだ。

 しかし一度は提携関係になりながらも、イーブンなパートナーシップを望むスズキを、資本の理論で支配しようとしたフォルクスワーゲンの態度はスズキの反発を招き、後に法廷闘争を経て、関係を解消する。そうして日本にとって幸いなことに、世界に通用する軽自動車の技術は国内アライアンスの中にとどまったのである。しかし役所が動くのを待ってはいられない。大前提として、日本のドメスティックなサイズと、グローバルなサイズは別々のまま推移することを前提にするしかない。

 「軽自動車とAセグメントと両方作ればいいじゃないか?」。そういう意見も耳にする。しかしながら開発リソースは限られている。資金的にも人員的にもだ。クルマの開発チームはやはりどうしても属人的能力に左右されるから、どうしても実力差は出てくる。国内では軽自動車のシェアは4割、一方グローバルな成長マーケットはAセグメントとBセグセグメント、つまりパンダやup!のクラスと、ヴィッツやポロのクラスになるのだが、ダイハツにとってもスズキにとっても、国内外ともに極めて重要なマーケットで、限られたドリームチームをどこに投入するかの判断は難しい。逆にいえば、限られたリソースの中で、軽、Aセグ、Bセグの3つのクラスで戦闘力の高い商品をどうやって作るかが勝負の分かれ目になるということでもある。それを解決するのがDNGAなのだ。

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