日本の相対的貧困率はG7(先進7カ国)でワースト2位。一人親世帯に限るとOECD(経済協力開発機構)加盟35カ国中ワースト1位。日本の母子家庭の母親の就業率は84.5%と、先進国の中で最も高いにもかかわらず、突出して貧困率が高く、米国36%、フランス12%、英国7%に対して、日本は58%と半数超です(OECDの報告より)。
生活を豊かにしたくて真面目に働いているのに、働けど働けど楽にならないという現実が、私たちの社会に存在しているのです。
こういった話をすると、「でも、相対的貧困でしょ? 食べ物がない、家がないとか、人間としての最低限の生存条件を欠くような絶対的貧困とは違うでしょ?」と口をとがらせる人がいますが、そういう人は「格差が広がっている」と考えるといい。つまるところ、相対的貧困率が高いという現実は、一部の裕福な人と多数の賃金の低い労働者で社会が成立していることを意味し、上から下に落ちることはあっても、下から上に上がれる確率は絶望的に低下する。
その大きな理由が「機会の奪略」による貧困の連鎖です。
機会の奪略は、「普通だったら経験できることができない」ことを意味し、相対的貧困の最大の問題といっても過言ではありません。
とりわけ幼少期の「機会奪略」はその後の人生の選択にも大きな影響を及ぼします。具体的には、教育を受ける機会、仲間と学ぶ機会、友達と遊ぶ機会、知識を広げる機会、スポーツや余暇に関わる機会、家族の思い出を作る機会、親と接する機会……etc. といった経験を幼少期に積む中で、私たちは80年以上の人生を生き抜く「リソース」を獲得します。
ところが低所得世帯の子どもはそういった機会を経験できず、進学する機会、仕事に就く機会、結婚する機会など、「機会奪略のスパイラル」に入り込み、貧困の連鎖が拡大するのです。
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