借り入れ依存度9割弱 金融機関の支援で「延命」されていた長野県有数の中小企業がたどった末路あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(8)(3/5 ページ)

» 2019年08月17日 04時00分 公開
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リーマン・ショック、東日本大震災……需要後退の逆風が続く

 リーマン・ショックのもともとの火種は、米国の金融機関が住宅バブルを受け、返済能力の低い借り手にも高手数料で貸し出していたところへバブルがはじけ、多額の貸出金が焦げ付いたことだ。これにより、銀行のローン債権を多数保有していたリーマン・ブラザーズが倒産。ドルが基軸通貨だったことから、世界中に飛び火した。

 リーマン・ブラザーズの倒産を機に、米国の金融市場は疑心暗鬼になり、資金が次々と回収されたことで株の暴落や中小企業の倒産が連鎖的に起こった。ドルへの不信が強まるなか、買われはじめたのが円だ。ドルに代わる安定通貨として円がさかんに買われ、結果として急激なドル安・円高が起こる。

 米国一国内で起こったバブルとその崩壊の影響は、こうして日本にも及ぶことになった。円高によってまず国内の輸出企業が打撃を受け、そこからドミノ式に国内企業に波及、日経平均株価の大暴落につながった。

 この爪痕は深く、しばらくの間、リーマン・ショック前に大型投資を実行したものの、売り上げの急減により経営が一気に悪化する企業が増えた。ダイナテックもそうしたケースにあてはまる。国内外ともに需要が大幅に後退した。

 それに拍車を掛けたのが、格安携帯の参入、iPhoneやスマートフォンなど携帯端末の多様化に伴う市場の変化だった。10年には中国における大口需要先だった海外の大手携帯電話メーカーが事業から撤退したことも重なり、以後、中国事業は悪化の一途をたどっていく。

 11年の東日本大震災後には国内需要も後退。結局、年売上高は08年3月期がピークとなった。以降は減収基調が定着、4年後の12年3月期には約16億2300万円と、08年から6割以上も落ち込んだ。この間、運転資金の導入によって借入金はさらに増加、12年ごろになると資金調達にも支障を来すようになっていた。

 需要減退、借り入れ過多、運転資金不足と厳しい事態に陥ったダイナテックは、金融機関の支援を仰ぐこととなった。

 その背景にあったのが、中小企業金融円滑化法だ。これは借入金の返済条件を緩和することにより、企業の経営改善を後押しすることを目指したもの。09年12月〜13年3月の期限つきだったが、その後の今日も、その趣旨は生き続けている。

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