借り入れ依存度9割弱 金融機関の支援で「延命」されていた長野県有数の中小企業がたどった末路あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る(8)(4/5 ページ)

» 2019年08月17日 04時00分 公開
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最後まで足かせとなった中国事業

 12年2月、取引金融機関との協議の末、元本の返済を棚上げする措置がスタート。膨らんだ借入金の返済が重荷となっていたダイナテックにとって、これが大きな支援となったことは間違いない。こうした金融支援は、基本的にダイナテックが倒産するまで続く。

 支援の長期化とは、見方を変えれば、経営は維持できても長期にわたって肝心の経営改善が進まず、成果が出なかったということだ。課題のひとつだった中国事業に関しても、業績の悪化に歯止めがかからなかったため、天津工場と深圳工場を相次いで清算するが、ここで多額の損失が発生する。

 当初、新たな成長への足掛かりになることが期待された中国への進出だったが、市場環境の変化にもさらされた結果、裏目となり、投資負担や清算コストによって資金繰りのさらなる悪化を招いた。市場の行方を正確に把握することは難しいが、厳しい言い方をすればダイナテックは市場予測を見誤ったことになる。

 中国撤退後は国内生産に特化。国内市場も伸び悩む中で、新規分野の模索にも注力して立て直しを図ったが、このころになると信用不安説が浮き沈みするようになる。

 返済は猶予されても、新たな資金調達は難しい。従業員削減、コスト見直し、役員からの借り入れなどで何とか経営を存続させたが、16年3月期の年売上高は約6億2300万円とピーク時の7分の1近くにまで落ち込み、5期連続で大幅赤字を計上した。

 最終的には、今後の給与支払いと手形決済のメドが立たなくなり、17年6月5日をもって事業を停止。パートを含めた42人の従業員を解雇し、6月30日には長野地裁松本支部へ自己破産を申請した。

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