#SHIFT

7pay問題に潜む病巣――日本のIT業界で是正されない「多重下請け構造」必ずまた起きる(4/5 ページ)

» 2019年08月28日 05時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

リーマンショックの反省から業務を多様化

――起業を考えている学生を、サポートしようと考えたのはなぜですか。

 起業するにはいろいろなものが必要ですよね。直接起業してもいいですし、当社に入社して、しっかりした事業計画ができれば、当社はホールディングス化していますので、エンジェル投資家となって参画することも視野に入れています。この育成手法は、世界ではスタンダードです。

 教授の推薦状だけで採用することも、起業などの支援ができるのも、当社が防災、セキュリティ分野の自社製品開発のほか、自動車業界、航空業界、プラント業界、建設業界など幅広いお客さまと連携している多様性のある企業だからです。入社してからでも、やりたいことを見つけることができます。

――それだけ多様な業務を持っているのは、どのような理由からですか。

 私自身がこれまで一番失敗したというか、一番悔しかった経験からです。それは、2008年に起きたリーマンショックの時に、社員を抱えきれなくなったことです。私は当時子会社の営業部長で、200人の従業員がいました。助成金も使いながら、何とか雇用していきたかったのですが、景気がなかなか回復せずに、結局45人くらいの社員が辞めざるを得ませんでした。これは一番辛かったです。

 その子会社は、自動車と家電の仕事が中心で、リーマンショックのあおりをもろに受けました。一方で親会社の当社には、原子力関連の仕事がありました。当時は2007年に発生した新潟県中越沖地震の直後で、配管設備のサポートの仕事が国の予算で出てきたので、乗り切ることができていました。

 その時に、派手な業種だけに取り組むのではなく、地味な仕事であっても業務の幅を広げることが重要だと感じたのです。現在はグループ全体で業種を広げ、新たに水処理業界の仕事などにも取り組んでいます。

 結局、社員を育て、守るのは会社が取り組むべきことです。将来を担うエンジニアを育成するのも、人材を社内で確保して多重下請けを解消するのも、会社が努力すべきだと思います。

phot 甲賀社長は、リーマンショックの時に社員を抱えきれなくなり、45人の社員の雇用を守れなかった苦い経験を教えてくれた

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.