――甲賀社長は韓国の釜山外国語大学で特任教授もされているそうですが。
日本で働きたい学生のために、就職活動をサポートする担当です。もともとグループ会社にいるときに、韓国人の学生を採用するために大学を訪れていました。この大学はIT業界を志望する学生が多いです。
――日本の企業が採用しているのですか。
日本のIT企業が採用しています。韓国は儒教の国なので、若者は非常に真面目です。日本へワーキングホリデーに来る学生が多く、その時に日本語と日本の文化を学んでいるので、就職後もスムーズに働くことができます。中国人やベトナム人だと、ごみの捨て方から教えないといけませんから。
――日本政府による、韓国向けの輸出規制強化を巡る問題は、IT業界の採用にも影響が出そうですか。
出てくると思います。韓国では年2回、日本や欧米の企業が参加する就職イベント「就職博」が開かれています。韓国政府の経済産業省にあたる部署が主体となって、ソウルやプサンで開催されていますが、今年9月の「就職博」では日本企業の参加が見送られました。日本は大手から中小まで多くの企業が参加していましたから、人材不足に拍車を掛けるのではないでしょうか。
――日本でIT業界の人材を育成することは、急務といえますね。
人材を育ててこなかったことで、ものづくりの分野では、日本が中心になって作ったものが減っています。アメリカの電化製品なんて、20年前は誰も使っていなかったですよね。これだけ日本製品のシェアが低くなったことは、深刻な状況だと思います。
――日本全体では、人材不足を解消するために、どのような打開策が考えられますか。
私は地方が一つの鍵になると考えています。失われた30年とも言える平成の時代のなかで、地方は埋没していきましたが、まだまだ優秀な学生が地方にいるのではないかと思っています。
東京大学はまだ全国から学生が来ていますが、東京工業大学には地方から来る学生がほとんどいません。おそらく、可処分所得が減るなかで教育費が削られ、能力やポテンシャルが高い地方の学生が東京や大阪の大学に行けずに、地元の国公立大学に進学しているのではないでしょうか。教授の推薦状で内定を出す取り組みには、地方の優秀な学生を掘り起こしたい思いもあります。
日本の企業は多重下請け構造に依存するのではなく、採用などの人材の掘り起こしと、人を育てることにもっと本気になるべきです。社員の能力が上がれば生産性はあがるわけですから。日本のIT企業の発展や、ものづくりの復活のためには、将来を担う人材を育成するしかないと思っています。
以上がセントラルエンジニアリング甲賀社長へのインタビュー内容だ。同社もかつて法整備が進む前は、元請けや下請けの立場で多重下請けに関わっていたというが、現在では一切やめている。長期的な視野に立って、新しい時代に価値を生むエンジニアを育てることが重要だと考えたためだ。
その結果たどり着いたのが、「Laseek Project」による人材育成と、教授の推薦状だけで内定を出す採用方法なのだろう。
多重下請け構造から脱却し、技術力や生産性を向上させていくためには、企業自らが人材育成に努力すべきなのは明らかではないだろうか。
田中圭太郎(たなか けいたろう)
1973年生まれ。早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年4月からフリーランス。雑誌・webで警察不祥事、労働問題、教育、政治、経済、パラリンピックなど幅広いテーマで執筆。「スポーツ報知大相撲ジャーナル」で相撲記事も担当。Webサイトはhttp://tanakakeitaro.link/
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