なぜ日本企業は「セコい不正」をやらかすのかスピン経済の歩き方(2/4 ページ)

» 2019年08月27日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

世界に誇るジャパニーズサラリーマンの矜持

弁護士の河合弘之氏

 巨大企業がどう暴走して、得意の絶頂にあった経営者がどう転落していくのか、ということを誰よりも間近で見てきた河合氏によれば、最近の企業不祥事は、自身が過去に関わってきたような大型経済事件とまったく性格が違うという。

 「昔の経済事件は一言で言うと、私利私欲追求型。私の当時のクライアントを振り返っても、ダイエーの中内(功)さんはちょっと違いますが、ホテルニュージャパンの横井(英樹)さん、イトマンの河村(良彦)さん、第一不動産の佐藤(行雄)さん、秀和の小林(茂)さん、武富士の武井(保雄)さん、イ・アイ・イの高橋(治則)さん、などみな自分の欲望に忠実な経営者が多かった印象です」

 そして、このような「私利私欲型不正」がかつてより減少したことで、日本企業の「セコい不正」ばかりが悪目立ちして、増えているように感じるのではないか、と分析しているのだ。

 「実は昭和の時代も、検査データを改ざんするとか、消費者をカモにする企業の不正はありましたが、私利私欲で巨額のカネが動く大型経済事件が続いていたので、目立つことはありませんでした。バブルが崩壊して、経営者があまりに強欲であることは下品であって、株主様や世間様に胸を張って説明できる経営をすべき、となったことで大型経済事件が急速に減少した。そこで入れ替わるように、昔からあった”サラリーマン犯罪”に注目が集まるようになったのではないでしょうか」

 そのような話を聞くと、最近の企業不祥事に対して、やや同情的に見てしまう方も多いかもしれない。やりたくない仕事でも文句を言わずにやる。「こりゃどう考えてもアウトだろ」ということでも会社の決定には黙って従う、というのが世界に誇るジャパニーズサラリーマンの矜持だからだ。

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