なぜ日本企業は「セコい不正」をやらかすのかスピン経済の歩き方(4/4 ページ)

» 2019年08月27日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]
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唯一の救いは「第三者委員会」

 では、社外取締役制度が機能しないのなら、もはや日本企業の”サラリーマン犯罪”を防ぐ術はないのか。このシビアな現実を前にして、河合氏が「唯一の救い」と捉えているのは、第三者委員会だ。

 「私がこれまで被害者の弁護を請け負ってきたケースなどでも、後ろめたいことがある企業は絶対に第三者委員会はつくりません。裏を返せば、何か問題が起きたら第三者委員会をつくるのが当たり前のような世の中になれば、企業の不祥事をだいぶ抑えることができるのです」

 確かに、支離滅裂な言い訳を繰り返して、次から次へと問題が浮かび上がった吉本興業が、経営に対してなんの効力もない「経営アドバイザリー委員会」を立ち上げてお茶を濁したことからも分かるように、「問題企業」ほど、どうにかして第三者委員会を設置しない道を模索する事実がある。

 「と言っても、第三者委員会ならなんでもいいというわけではなく、世間の批判をかわすためにとりあえず知り合いの弁護士に頼みましたという“なんちゃって第三委員会”ではありません。有名な“ヤメ検弁護士”なんかがやっている第三者委員会も危ない。久保利英明(第三者委員会会報告書格付け委員会を設立した弁護士)や中村直人(スルガ銀行の第三者委員会委員長を務めた弁護士)という金や権力に屈しない気骨のある弁護士が中に入って、徹底的に内部を調べ上げるようなものが望ましいです。少なくとも日弁連の推薦を受けたような人ではないといけませんね」

 日本企業の「セコい不正」がいつまで経ってもなくならないのは、本物の「第三者委員会」が普及していないからなのかもしれない。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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