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変化の時代に日本企業が対応できないのはなぜか 製造業の成功がもたらした“落とし穴”【対談】留目真伸氏×本田哲也氏(前編)(1/3 ページ)

» 2019年09月02日 07時00分 公開
[柴田克己ITmedia]

 社会の状況が激しく変化する中で、日本国内でも「働き方改革」への関心が高まっている。これまでの硬直化した非効率な働き方を変え、生産性を高めることは、企業にとって喫緊の課題となっているからだ。では、そのために仕事を進める組織やチームはどう変化していくべきなのだろうか。元レノボ・ジャパン代表取締役で、現在は新産業の創出に取り組む留目真伸氏と、「戦略PR」などで知られるPRの専門家・本田哲也氏に、企業が取り組むべき課題とその解決策について語ってもらった。

photo 留目真伸氏(右)と本田哲也氏(左)

留目真伸(とどめ・まさのぶ)

SUNDRED株式会社 代表取締役、株式会社HIZZLE ファウンダー/代表取締役、VAIO株式会社 Chief Innovation Officer。早稲田大学卒業後、総合商社、戦略コンサルティング、外資系ITを経てレノボ・ジャパンに入社。2015年4月より同社とNECパーソナルコンピュータの代表取締役社長。2018年4月HIZZLEを創業。その後、資生堂のチーフストラテジーオフィサーを経て2019年7月にSUNDREDの代表取締役に就任。2019年8月にVAIOのChief Innovation Officerに就任。

本田哲也(ほんだ・てつや)

「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」にPRWEEK誌によって選出された日本を代表するPR専門家。世界的なアワード『PRWeek Awards 2015』にて「PR Professional of the Year」を受賞している。セガの海外事業部を経て、1999年に世界最大規模のPR会社フライシュマン・ヒラードの日本法人に入社。2006年、スピンオフのかたちでブルーカレント・ジャパンを設立し代表に就任。2009年に「戦略PR」(アスキー新書)を上梓し、マーケティング業界にPRブームを巻き起こす。P&G、花王、ユニリーバ、アディダス、サントリー、トヨタ、資生堂など国内外の企業との実績多数。2019年より、株式会社本田事務所としての活動を開始。著書に「戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

―― 今回の対談テーマは「変化の時代に対応するために、組織やチームはどう変化していくべきか」ですが、はじめにお二人のご経歴と、現在取り組んでおられることについて、教えてください。

留目: 私は大学を出て、まずは漠然と「社会的に大きな仕事がしたい」と考え、総合商社に就職しました。その後、自分の中で「大きな仕事」の定義が変わり、経営の意思決定に関わることを目指すようになります。

 そうして、戦略コンサルティング会社などを経てレノボ・ジャパンに入り、事業責任者や社長を経験しました。レノボにいた頃は、コンピューティングのための機器がPCから、タブレットやVR/ARといったものへと移り変わっていく時代でもあったので、これまでにない新しい市場やプラットフォーム作りにもチャレンジしていました。

本田: そうした、新たなビジネスの創造というのは、留目さんが現在「HIZZLE」や「SUNDRED」でチャレンジされていることにもつながってきますね。

留目: そうですね。そもそも、誰も知らない、まだ世の中に存在しないものを作ろうとするわけですから、とても難しいチャレンジです。ですが、今は、特定のひとつの製品で何かの課題を解決できる時代ではなくなっています。いろいろなものがつながることで、はじめてソリューションになります。

 そうなると、ひとつの会社に属している人たちだけで、新たな事業を作ることは難しい。社内だけでなく、社外の力やアイデアをいかに集めて「チーム」にできるかが重要になってきます。

 そのために、私自身も多くの会社に出向き、多くの人に会いましたが、その中で感じたのは、これから新しい事業を作って行く上では、会社よりも「人」をどのように見つけ出して、チーム化していくかが重要だということです。ある課題に対して、新しい解決方法を確立していきたいという強い思いを持った人。そうした人を、めざとく見つけ出して、進めていく必要があります。

本田: スタートアップの中にも、そうした思いを持っている人は多いと思います。

留目: 企業に所属している人が、スタートアップのコミュニティに積極的に参画して、つながりを作っていくというのは、今、とても重要になっていますよね。これからの時代に日本で新たな市場を作っていこうとすると、大企業だけでも、スタートアップだけでもどうしても難しい側面が出てきてしまいます。

 ですので、SUNDREDでは、成長領域に対してそこがどうあるべきかというアイデアを提示し、企業の垣根を越えてそれに共感してくれる人を集めて、ブラッシュアップするという作業を進めています。目標は「100個の新産業を作る」ことです。

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