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変化の時代に日本企業が対応できないのはなぜか 製造業の成功がもたらした“落とし穴”【対談】留目真伸氏×本田哲也氏(前編)(2/3 ページ)

» 2019年09月02日 07時00分 公開
[柴田克己ITmedia]

留目: 本田さんも、最近、個人事務所を立ち上げられたと伺っています。そちらでは、何をしようとされているのでしょう。

本田: はい。自分自身がPR業界で20年という節目を迎えたのを機に、「本田事務所」という個人事務所を立ち上げました。目的は主に2つあって、1つは日本企業のマーケティングにもっと「戦略性」を持たせることです。

留目: 本田さんは「戦略PR」を核にさまざまな活動をされていますよね。

本田: 日本でPRというと、どうしても「広告」のことだと思われがちですが、米国では世の中の「空気作り」、もっと言えば「世論形成」を意図的に行うことを意味しています。僕は最初外資系のPR会社に入ったので、最初から米国で「本物のPR」を実際に見ることができたんですね。しかし、当時の日本ではそうした「戦略PR」という考え自体があまり知られていませんでした。

 高度経済成長期の日本では、1億人がお茶の間にいたので、最も合理的な宣伝方法がテレビで大量に広告を打つことだった。だからこそ広告産業が類まれな発展をしたわけですが、本来PRとはそういうものではない。除菌洗剤を売るときには、ただ洗剤の広告を打つのではなく、「洗濯機にはばい菌がいっぱい!」という話をする――といった発想が必要なんです。こうした戦略が日本のマーケティングには欠けているんですね。

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留目: たしかに、日本企業は目先の戦術にこだわりすぎるところがありますね。

本田: そうした状況を変えていきたいという思いがあります。そして、もう1つの目的は、チームのフレキシビリティ(柔軟性)を高めることです。留目さんはこれまで事業社側で仕事をされていますが、私が20年やってきたPRというフィールドは、そうした企業を支援する側です。

 そこで感じたのは、いろいろな意味でのフレキシビリティがなければ、この先どんどんつらくなっていくだろう、ということでした。世の中がどんどん変化し、多様化していく中で、支援側がそれに対応できないような、フレキシビリティの乏しい考え方や組織になってしまうと、価値のあるサービスは提供できません。

 そこで、本田事務所では副業をしている会社員やフリーランスをプロジェクトベースで組織し、フレキシブルなチームで仕事にあたるということをやろうと思っています。PR会社でも、私一人がコンサルをやるのでもない、新しいチームの在り方を考えています。

 例えるなら、映画「オーシャンズ11」のようなイメージでしょうか。ターゲットを決めたら、それに適したスキルを持ったプロが集まって仕事にあたり、無事終わったら報酬を山分けして解散――といった感じで、雇用関係のない、ゆるいチームを作っていけたらと思っています。人材が流動していく今の時代にも合っているのではないかと。

留目: 格好いいですね。副業会社員やフリーランスにとっても、良い仕事に携われる機会が増えるという点で、意義のある取り組みだと思います。

本田: 先ほど留目さんは、「会社よりも人を見つけ出すことが大切だ」とおっしゃっていましたが、私もそう思います。「人」が「人」を呼ぶことでチームに必要な人脈を作れるようになるんですよね。

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