そうした環境下で、スズキがインド向けにBセグメントのバレーノを開発したのは、これまでの主軸車両であるアルト、イグニス、スイフトを愛用してきた顧客が、より大きいクラスへと乗り換えようとした時、候補となるクルマがないために、スズキブランドそのものを卒業してしまうことへの対策だった。つまり今後、時代とともにインドが豊かになり、少しずつ上のクラスへ上がっていく顧客に対して、常に次のクラスの商品を用意しておかねばならない。
現在スズキは、Cセグメントにシアズを用意しているが、下のクラスほどの強みが発揮できていない。大幅に増えているのはスイフトとバレーノのクラス(Bセグメント)で、アルトのクラス(Aセグメント)も減っている。ユーザー層全体が上へ持ち上がっているのだ。アルトの顧客がスイフトへ移行し、スイフトの顧客がバレーノに移行する。当然バレーノからシアズへの移行も進まなくてはならないのだが、むしろ昨対で数字を落としてしまっており、今のところうまく移行できていない。グローバルに見てもセダンの人気は下降が著しく、シアズの不振には時代背景の問題もあるとは思うが、いずれにせよCセグメントの強力な受け皿が欲しいところだ。
さて、トータルで見て、今は絶好調のスズキだが、Cセグメントへの移行がうまくいっていない部分は中期的には不安要素だ。今後も発展を続けるインドマーケットにおいて、スズキがマーケットの成長に置いていかれないためには、今以上のブランド力が求められ、そのためにはCセグメントクラスの魅力を高め、変わりゆく市場にマッチした商品を提供していかなくてはならない。
筆者の勝手な想像だが、例えばここにトヨタのプリウスやアクアのOEM車両を用意することができれば、中期戦局は大いに変わるだろう。トヨタとの提携でこのあたりの車種選択がどうなるかもひとつの見どころになる。
18年3月のスズキの発表では、『スズキからトヨタへ「バレーノ」「ビターラ・ブレッツァ」を供給し、トヨタからスズキへは「カローラ」を供給』とアナウンスされた。すでにバレーノはトヨタへの供給が始まっており、カローラにはストロングHV搭載モデルもあるはずだ。インド当局のHV容認への方針転換は、これにどういう影響を及ぼすのだろうか?
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