18年の第1回実証実験で私が感じた「自動ではない不満」について、第2回ではきっちりと解決、または解決案を見せてくれた。なるほど、自動運転はこうして進化していくわけだ。江の島は20年東京五輪のセーリング競技会場になっており、小田急グループはそこで自動運転を実用化したい考えだ。しかし現状は、理想の自動運転までの道のりはまだ遠いと感じた。
例えば、停車の動作はぎこちない。スムーズに停まるかと思ったら、最後にキュッと停まって、つんのめる感じがある。これは自動運転の安全性を高めるため、メリハリをつけてしっかり停止するようにプログラムされているからだろう。当日に試乗した神奈川県知事の黒岩祐治氏は、前回に比べて進化したと評価する一方、この停止時の挙動が気になったようだった。
私は鉄道ファンのせいか、自動車を運転するとき、街路では電車のような操作を心掛ける。少しずつマスコンのノッチを上げるように加速し、停止するときは強めにブレーキを踏んでから、少しずつ踏む力を弱めていく。こうすると電車のようにスッと停まる。信号を見て、歩行者信号の動きなどを察知して停車を判断し、停車がスムーズに決まるとうれしいし楽しい。そんな小さな達成感でドライブしている。
自動運転バスの場合、ブレーキを緩めていくという動作はリスクが大きいかもしれない。マイカーの高度運転支援システム(ADAS)でオートクルーズの渋滞区間を走らせたときも同様の挙動になる。安全を極めた後になるかもしれないけれど、乗り心地については研究の余地がありそうだ。
大きな問題が解決すれば、小さな問題が目立つ。その一つ一つを解決して自動運転は理想に近づく。18年9月は落胆しかなかった自動運転。19年8月には課題と解決の道筋を見せてくれた。
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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