公的年金制度の持続可能性については、昔から何度も議論されており、1989年には急速な高齢化への危機感から、学生に対して国民年金に強制加入させたり(それ以前は、20歳以上であっても学生の加入は任意だった)、国民年金の不足を補うため国民年金基金を創設したりするといった制度改正が行われた(施行は91年)。
当時、若年層だった人たちの多くは「自分たちが年金をもらう頃には制度は破綻している」「高齢者のために若い人からお金を取るのか」「保険料など払うだけムダだ」と声高に主張していた。学生に対する強制加入についても、反対の声が圧倒的に多かったのが現実である。
ところが、「高齢者のために若年層が負担するなどまっぴらだ」と声高に主張していた当時の若者たちは、時を経て中高年になった。ごく一部の成功者を除けば、ほとんどの人が、自分がもらえる年金のことで頭が一杯という状況だ。公的年金だけでは十分には暮らせないことなどよく理解していたはずだが、厳しい現実を目の前にすると、「政府はなぜもっと年金を支払えないのか」という主張に変わってしまうのだ。
厳しい言い方かもしれないが、現時点で「年金などアテにしていない」「高齢者ばかり優遇する制度だ」とうそぶいている若年層の多くが、20年後には「年金、年金」と大合唱し、20年後の若年層から総攻撃を受けていることだろう。
ちなみに、今、50代の中高年社員が新入社員だった1980年代当時の記事を見ると、今どきの新入社員は「遊びにいくことばかり考えている」「私生活を最優先して会社に尽くさない」「会社をすぐ辞めてしまう」といった話のオンパレードである。新人たちも「自分たちは、上の世代のような会社人間には絶対にならない」と強く主張していたが、30年後に彼等がどうなったのかについては説明するまでもない。
ちなみに3年以内に会社を辞める新人の比率は過去30年間ほとんど変わっておらず、日本のビジネスパーソンの行動に大きな変化は見られない。つまり、いつの時代においても若年層というのは「自分たちだけは違う」と主張するものの、結局は中高年になると似たような振る舞いをするものなのだ。
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