クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

カローラ・セダン/ワゴンが意味するもの池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)

» 2019年09月24日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

3つのメインディッシュ

 トヨタの説明によれば、世界各国で販売されるカローラは、地域によって求められるキャラクターが異なる。欧州では「スポーツ」、アジアでは「高級」、そして日本では「コンパクトな取り回しの良さ」が求められるという。

 確かにCセグメントという商品特性を考えれば、競合車も同じような条件が求められだろうが、販売台数が台数だけに、カローラでは少し事情が違う。

 求められる3つの要素には普通はプライオリティが付く。しかしカローラはその3つ全てがメインディッシュになっていなければならない。そんな無茶な要求を同時に求められ、それに真面目に対応するクルマはそう多くない。

 だからカローラとは何か? と問われたら「スポーツ」「高級」「取り回し」の3つを同時にかなえるクルマだといえるだろう。それこそがカローラであり、同時にカローラの難しさでもある。

 ここでTNGAがその本領を発揮する。例えばトレッドとホイールベースというクルマの基本を決めるディメンジョンすら、日本仕様だけコンパクトな数値が与えられる。TNGAでは、あらかじめ変動する部分を織り込んで設計を行い。同時に絶対に変えない部分を決める。それはつまり最初から仕様の詳細をバリエーションまで含めて折り込み、どのバリエーションでも最適になるように設計することだ。

ワゴンタイプのカローラ・ツーリング

 ただ、ハードとしての変化対応はそれでまかなえても、ソフトとしてのキャラクターがそれで解決するかといわれると、そこはまた別問題だ。

 例えば、かつてのカローラは「いつかはクラウン」というトヨタワールドの途中の1ステップだった。車格によって階層化され、割り振られた全体図の魅力でトヨタワールドの一断面としてカローラを見せることができた。しかしとうの昔に「いつかはクラウン」という時代は終わっている。

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