リゾートワーク制度を導入するにあたって、ヌーラボでは、情報管理の規程などに特別に手を入れる必要はなかったという。「業務中にPCの前を離れる際には必ずロックをかける」「端末の紛失や盗難があった場合は速やかに届け出る」というようなルールは、一般的な出張やリモートワークの際に注意することと全く変わらない。
興味深いのは、リゾートワークを展開している同社が、個々の社員の「完全なリモート就業」については「まだ最適解が見えていない」と、慎重なスタンスをとっていることだ。同社の場合、国内3カ所(福岡、京都、東京)と海外3カ所(ニューヨーク、アムステルダム、シンガポール)に拠点を置いていることもあり、そもそも普段から「遠隔地にいる同僚とのコラボレーション」が必須の環境でもある。
その一方で、年に1回は全拠点の社員が一堂に会する機会を設けているほか、入社にあたっては、最寄りの拠点に「通える」場所にいることが、条件の1つにもなっている。
「完全なリモートワークに関しては、社員の管理と合わせて、その成果をどのように評価するのがベストなのか――という点でも、まだ解決すべき課題が多いと思っています。現状では、個々の社員の性格や事情などをマネジャーが把握できていなければ評価も難しいといった現実もあり、最適解を模索している状況です。
もちろん今後は、ヌーラボが提供するツールで、そうした課題を解決し、メンバーがどんな場所にいても、問題なく一緒に仕事ができるという環境を広げていきたいと考えています。ヌーラボのリモートワーク制度は、そうした企業のミッションとうまく接続できているからこそ、継続できているのかもしれません」(安立氏)
同社に限らず、テレワークやリモートワークの導入拡大が難しい理由として「コミュニケーションが不足する」「マネジメントや評価が難しい」といった課題が挙げられるケースは多い。こうした状況を打開するための方針として、ある程度、期間や就業場所、ルールが決められたリゾートワークを「研修」として先行導入し、そのメリットやデメリットの分析をフィードバックするというのも、1つのやり方のように思える。
ヌーラボの「リゾートワーク制度」には、2019年から、主にWeb受託開発事業を展開しているベンチャー企業「プラハ」も参画を発表している。「研修」の一環としてのリゾートワークのスキームに関心を示す企業は、今後も増えるのではないだろうか。
「社会的な『働き方改革』への関心は高いですが、その実現にあたっては、企業側の目線から、“社員をどう管理するか”“KPIをどこに置くか”といったことばかりに意識が向いていることが多いように感じます。
本来であれば、社員に『どのように働いてほしいのか』『何を受け取ってもらいたいのか』を考え、それを阻害する仕組みやルールを変えていくことが改革の本質で、それがない『働き方改革』には、あまり意味がないなと感じながら、われわれ自身も試行錯誤をしています」(安立氏)
【企画・構成 インタビュー:後藤祥子(編集部)】
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