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なぜ私は「イクメン」と呼ばれるとイラっとしてしまうのか新連載・「イクメン」と呼ばれて(1/4 ページ)

» 2019年10月05日 06時00分 公開
[吉田亮太郎ITmedia]

【新連載】「イクメン」と呼ばれて

東京都在住、夫婦共働き、2人の子どもは保育園。付近に親族が住んでおらず、手助けが得られない状況で、父親である筆者は仕事と家事・育児を両立させるべく奮闘する。そこから見えてきたニッポンの子育てのリアル。


 「申し訳ありません。その日は保育園のお迎えがありまして……」

 「では、そのあとメールをご確認いただくことはできますか?」

 「子どもに晩ごはんを食べさせて、お風呂にも入れないといけないので、返信が深夜になりますが……」

 「すごい! イクメンですね」

 これは、私が取引先の方と交わした会話です。私はなぜか「イクメン」と呼ばれると、イラっとしてしまいます。もちろん、相手に悪気はありませんし、社交辞令的に「イクメン」という言葉を使っていることも分かっています。

photo イクメンは増えているようだが……(写真はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 私は、2歳と5歳の子どもを育てる父親です。正社員としてフルタイムで働く一方、妻は時短勤務をしています。妻と私は都内に住んでいるのですが、お互いの親は遠く離れた場所に住んでいます。いわゆる核家族です。妻が仕事の都合でどうしても残業をしないといけない日には、私が代わりに保育園のお迎え、食事と風呂の準備、寝かしつけをしています。また、2人目の子どもが生まれる前に妻が長期入院したため、その間は働きながら長男の面倒を見て、育児休暇も取得したことがあります。

 今回、筆者が「イクメン」という言葉にイラっとしてしまう理由をコラムにしようと思ったのには理由があります。「男性も育児参加を!」「女性も子育てしながら働こう!」というのが当たり前になっています。一方で、子育てに追われる親の実情が職場の上司や同僚に伝わらず、いろいろと残念なことが起きていると感じているからです。

予想以上にキツすぎた夫婦だけでの子育て

 まず、私がどれほど仕事以外の時間を家事と育児に費やしているか説明させてください。「頑張ってるアピール」をしたいわけでなく、まずは実態をご理解いただきたいのが理由です。

 私は、働く時間と寝る時間以外のほぼ全てを家事と育児に使っています。平日は午前6時に子どもたちに強制的に起こされます。その後、私と妻は分担して朝食を作り、子どもに食べさせ、服を着替えさせます。「テレビが見たい!」「●●(弟の名前)が僕のパンをとった!」などと騒ぎ立てる子どもをなだめながらタスクをこなす必要があるので、全ての作業はスムーズには行きません。

 朝食後は、妻が洗濯をしつつ、私は食器を洗います。食洗器に収まらない食器や、料理で使った鍋は手で洗います。ぐちゃぐちゃになったテーブルや床を掃除して、保育園に持っていく道具を準備しているとあっという間に午前8時過ぎになります。

 保育園の登園も一苦労です。長男と次男が同じ保育園に通っているのですが、言うことを聞きません。靴下と靴を履かせるのにも意外に時間がかかりますし、親もイライラしてしまいます。「保育園に行きたくない!」といって、逃げ回る長男を説得しなければいけない日もあります。登園途中も兄弟でケンカをするので、周囲に迷惑をかけないかと親はヒヤヒヤしています。

 このように、全てのタスクを進めようとすると、子どもだけでなく周囲への配慮が必要になるため、肉体的・精神的に疲れてしまいます。休日、子どもと過ごす時間が得られるというのはとても貴重なのですが、1日中一緒にいるので疲れてしまうのは同じです。

 私の両親は商店を営んでおり、祖父母とも同居していました。忙しい両親に代わって、祖父と祖母が幼い私の相手をしてくれました。しかし、この東京では家事・育児・仕事を全て私たち夫婦だけでしないといけません。家事代行サービスなども利用していますが、いろいろと限界があります。この点については別のコラムでご紹介したいと思います。

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