全長12キロの路面電車「都電荒川線」が10年先も走り続ける条件“都民の足”から観光へ、東京さくらトラム(1/4 ページ)

» 2019年10月07日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

変わる東京 進化の中で残る“強み”

 再開発が加速する東京。目まぐるしく時代が移り変わっても、ずっと残ってきたものにはどんな背景があるだろうか。ときには姿を変え、ときには古いものを守りながら、新しい時代を迎えた街や建物のストーリーと、将来への戦略を探る。


 ゴトゴトと車体を揺らしながら、東京の街をゆったりと走る路面電車。全国でも少なくなった路面電車の一つが、三ノ輪橋(東京都荒川区)〜早稲田(同新宿区)間の約12キロで運行される都電荒川線(東京さくらトラム)だ。

 東京都が運行する路面電車「都電」はかつて、全長200キロ以上にも及ぶ路線網を築き、沿線に住む人々の“足”として隆盛を極めていた。しかし、自動車や地下鉄の普及に伴って、そのほとんどが廃止された。荒川線だけが現在も運行を続けている。

 なぜ、荒川線だけが都電として残ってきたのか。そして、都電は現在、そして将来に向かって、どのような存在として走り続けていくのだろうか。

都電荒川線の沿線にはサクラの名所も(王子駅前停留場付近)

最盛期は1日193万人利用 銀座や浅草を走っていた時代も

 都電荒川線は東京都荒川区、北区、豊島区、新宿区にまたがる12.2キロの路線で、全30カ所の停留場を備える。この路面電車は現在、どのように利用されているのか。東京都交通局によると、2018年度の1日平均乗車人数は約4万7000人。前年と比べてほぼ横ばい。ここ10年ほどは大きく変わらないが、都電が荒川線だけになった1970年代前半と比べると半減している。

 路面電車を運行する軌道事業の経常損益は、08年度から赤字基調。17年度は約5800万円の黒字に転換したが、18年度は約3億6500万円の赤字となった。

 そんな都電も、かつては「都民の足」として機能し、都心に路線網を張り巡らせていた。

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