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» 2019年10月07日 07時00分 公開

“都民の足”から観光へ、東京さくらトラム:全長12キロの路面電車「都電荒川線」が10年先も走り続ける条件 (4/4)

[加納由希絵,ITmedia]
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「地元に愛されている」を強みに、インバウンド誘客強化

 「“地元の足”としての役割を果たすことは大前提として、観光資源としての活用も進めている。特に海外の人に向けて、東京の魅力の一つに位置付けられれば」と、交通局の担当者は話す。17年に意見を募って決定した「東京さくらトラム」という愛称もその一環だ。

 現在5種類、計33台保有する車両も、観光客を意識したものが多くなっている。07年に都電と沿線地域の活性化を目指して導入した「9000形」は、昭和初期の東京市電をイメージしたデザイン。赤と青の2パターンで、レトロな雰囲気を出している。また、老朽化した7000形の車両を、装置などを刷新して再利用した「7700形」は、若手職員で構成した「荒川線アピールプロジェクトチーム」がデザインを発案。クラシックモダンをイメージした塗装が施されている。

クラシックモダン塗装の「7700形」

 実際に、都電を利用する外国人観光客は増えている。改札がないため人数を数えることはできないが、都営交通の案内や乗車券販売、ジオラマ展示などを行う「三ノ輪橋おもいで館」(三ノ輪橋停留場前)には、多い日で1日30人ほどの外国人観光客が訪れるという。

 また、外国人観光客を待っているだけにとどまらない。香港や台湾などの旅行博に出展して都営交通をPR。現地の路面電車に都電の車両デザインを施したラッピングカーを走らせて、東京観光と都電の魅力を紹介するなど、海外での活動にも注力しているという。

 沿線地域との連携も進めている。19年1月からは、民泊サービスのAirbnb Japanと組んで、“沿線の暮らし”を体験する観光プログラム「TODEN LIFE TOURISM(都電ライフツーリズム)」を開始。沿線の店舗などに協力してもらい、昔ながらの生活や工芸、遊びを体験できるプログラムを用意した。三味線の演奏体験やミニチュアフード作り、手描き友禅体験、お好み焼き体験など、まだ数は少ないが、沿線で多様な日本文化に触れられることをアピールしている。

香港で走らせたラッピングカー「東京さくらトラムカー」

 「都電の最大の強みは、地元の人たちにすごく愛されていること」と、交通局の担当者は話す。沿線には都電をテーマにしたカフェ、都電の車両をデザインしたお菓子やお酒を販売する店舗などがある。沿線の清掃や、象徴的な存在となっているバラの手入れなどにボランティアで取り組む人たちもいる。

 「都電は自分たちのルーツである大事な存在。これからも魅力を高めて、沿線地域の活性化にもつなげていきたい」(担当者)。都電荒川線は、単なる移動手段ではなく、都営交通にとっても、沿線地域の人にとっても精神的な支柱なのかもしれない。それを将来に引き継いでいくためにも、さらなる魅力づくりや情報発信が欠かせないだろう。

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