比嘉: 昔僕のところに相談しに来た会社の話です。テレワークを導入したところ、外回りを担当する営業職ではうまくいきました。オフィスが縮小できペーパーレス化も実現、コミュニケーションもスムーズになりました。コストが下がり、顧客満足度も上がったのです。
一方、内勤向けのテレワークはうまくいっていませんでした。そこでは育児・介護を目的に在宅勤務制度を広げていましたが、やっている人も週1回くらい。しかも2〜3人のうち1人が実行するくらいでオフィスも減らせず、電子化も進みませんでした。
在宅勤務者は、あらかじめ電子化されていなかった資料をスキャンして自宅に送ったり、逆に外部から(職場にいない人に)掛かってきた電話を、他の従業員が受けたりする手間が増えました。在宅勤務をしている日の生産性は上がったかもしれませんが、他の従業員の生産性は落ちたのです。
その部署に(テレワークを)入れた時の経緯を聞くと、「仕事を継続してもらうためのワークライフバランス目的」だったそうです。でも、いつのまにか「テレワークを入れるとこういうメリットがあるはず。(営業担当の)モバイルワークではこのくらい成果が出ているのに……」と思われていた。
――経営者が、そもそも一貫した目標をテレワークに設定できていなかったということですね。ちなみに現場レベルではどのような失敗要因が挙げられますか?
比嘉: データでも出ていますが、(日本の)中間管理職は基本的に部下にテレワークをさせたくないと思っている場合が多いです。ヒアリングしたとある会社ではテレワークが全然進んでいませんでした。理由を聞くと、「自分の上司が反対しているので手を挙げない」のだと。
中間管理職の責任というより、彼らが「同じ時間、同じ場所で働いているのが当然」という働き方をずっと続けていた点が大きいと思います。机に座っていれば「頑張っていること」になり、残業すれば偉いという考え方ですね。
だから、そうしていないテレワーカーに不安を感じる訳です。(テレワーカーを管理する)マネジメント能力が無いため、ワーカー側に負荷を与えてしまう。マネジメントというのは出退勤管理ではなく、仕事の管理であるはずです。それができていれば、出退の管理は必要ないはずなのですが。
また、部下の方も上司を信用していなかったりしますね。(職場に出勤することで)「頑張っていますよ」とアピールせざるを得ない。
こうして、上層部が目的を理解していないし、中間層も反対しているので(テレワークの)規則が動かないのです。
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