セブン「1000店閉店、移転」はドミナント戦略の限界かスピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2019年10月16日 09時00分 公開
[窪田順生ITmedia]
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ドミナント戦略からスパッと手を切って

 以上のことを踏まえると、セブン-イレブンという組織やビジネスモデルを根底から崩壊させるような「危機」がすぐ側まで近付いているとしか、筆者には思えないのだ。これを回避するには、その場しのぎの対症療法ではなく、現場を疲弊させている根本的な原因に手を突っ込むしかない。そう、ドミナント戦略である。

 30年前の人口増社会の中で確立された「店の数を増やせば増やすほど売り上げが上がる」というドミナント戦略が、人口減少社会で一気にマイナス方向へ働いてしまっているのは明らかだ。

 これは例えるなら、下りエスカレーターに乗っているにもかかわらず、その動きに逆らって必死に上の階に駆け上がっているような状態である。「やれ」と言うほうはラクだが、実際にやらされる側からすれば、終わりのない拷問のようなものだ。

 窮鼠猫をかむではないが、組織に追いつめられた人間は、組織が想定していないようなすさまじい反撃をするものだ。

 取り返しのつかない「危機」が起きてしまうその前に、永松社長にはぜひドミナント戦略からスパッと手を切って、人口減少社会に見合う、適切なコンビニ数へと統廃合を進めていただきたい。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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