#SHIFT

ANA常務に聞く人材育成競争の“死角”とは――「ダイバーシティを目的化しない」人気の強制「修羅場」道場に密着【後編】(2/4 ページ)

» 2019年10月30日 05時10分 公開
[日比野恭三ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

「個」に向き合うために観察力を高める

――いきなり若い女子チームの監督になるのは大変だと思いますが、講師として受講生の様子をどのように見ていますか。

 どうやって大学生や高校生の輪の中に入っていくかで、参加する社員に差がつきますね。そして輪の中にすぐに入れる人がいいとも限りません。入れなくてもキーパーソンを抑えて組織をコントロールする手法もあります。最初から技術的な指導は期待されていない中で、組織の特徴を把握し、自分は何のためにそこにアサインされたのか、どうマネジメントしたらいいのかを考えなくてはならない。

 去年も今年も、1日目を終えた時の受講生の感想は同じでした。「頭が疲れた」と。普段はなかなか考えられていないことを集中して考えたからこそでしょう。

 「文武両道場」の面白いところは、一つの学校のチームではなく、複数の高校と大学の生徒が集まった混成チームになっている点です。ANAグループは「ダイバーシティ&インクルージョン宣言」を出していますが、チームはまさにダイバーシティそのもの。それをマネジメントしなければならないわけですから、わずか2日間といえども非常に大きな学びになると思います。

――ANAでは、ダイバーシティ&インクルージョン宣言のもと、どのような取り組みをしているのですか?

 世間で言われているダイバーシティが指すのは、主に「女性」「外国籍」「シニア」「障害者」の積極的な活用です。もちろん、私たちもそういった人財を多く採用しています。ただ、本来のダイバーシティとはそれだけを意味するものではないとも思います。ジェンダー、年齢、価値観など、全てが含まれる。言い方を変えれば、「個」に向き合い、「個」を尊重するということです。

 私たちはいま、全体像が常に見えるようにする取り組みを進めています。全ての「個」を一度に見ようとしても見きれない。例えば1人のマネジャーが部下10人に向き合い、その上司が10人のマネジャーに向き合う。そういった意識を浸透させながら、同時に会社として仕組みを整えていく。それがITの力を活用したタレントマネジメントシステムです。

 ただ、システムは材料があってはじめて機能するわけで、その材料を集めてくるのは人間の仕事。「個」に向き合ううえでの観察力やコミュニケーション力を高めることは重要ですし、だからこそ今回の研修に参加しているわけです。

photo ANAグループのダイバーシティ&インクルージョン推進の取り組み(以下、同社Webサイトより)
photo ANAの女性活躍推進における数値目標

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.