「無駄なことをやり続ける」 喫茶店不況の中、創業55年のレトロ喫茶が人気のわけ1964年から2020年へ(1/5 ページ)

» 2019年10月28日 06時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

 喫茶店の倒産が相次いでいる。調査会社の東京商工リサーチ(東京都千代田区)によると、2019年1〜8月の喫茶店の倒産件数は42件。前年同期は31件だったので、35.4%も増えている。同社によると、過去20年間で最も倒産が多かったのは2011年の70件だという。2019年もこのまま推移すれば、この数字にも迫る可能性がありそうだ。

 東京商工リサーチはこうした状況について、コンビニ各社が提供しているコーヒーや、タピオカドリンクのブームなどを理由として挙げている。全日本コーヒー協会発表の「喫茶店の事業所数及び従業員数」によると、国内の喫茶店事業所数は1981年にピークを迎えた。当時は15万軒ほどあった喫茶店は、年を追うごとに減少を続け、2016年時点ではおよそ6万7000軒。消費増税もあり、今後はさらに喫茶店にとって厳しい状況が続きそうだ。

 こうした中で、新宿にあるレトロな“純喫茶”が9月、2号店を西新宿に出店した。店名は「珈琲西武」。新宿三丁目にある1号店は1964年にオープンし、今年で55年目を数えるほどの老舗純喫茶だ。喫茶店チェーンでは、200円台からコーヒーが飲める店も増えている中、珈琲西武のコーヒーは最低でも600円。それでも、曜日を問わず入店待ちの行列ができるほどの人気ぶりだという。

珈琲西武2号店の外観

 喫茶店にとって厳しい情勢が続く今、なぜこんなにも人気なのか。また、このタイミングで新たに出店を決めたのはなぜなのか。担当者に直接取材してみた。

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