「無駄なことをやり続ける」 喫茶店不況の中、創業55年のレトロ喫茶が人気のわけ1964年から2020年へ(5/5 ページ)

» 2019年10月28日 06時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]
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お客との接点を増やす

 こうした「時間消費型」と呼べる店は価格が高いこともあり、一見客にはハードルが高く、なかなか入りづらい。「自分だけでは入らないが、先輩や上司に連れられてきて魅力を知っていただくお客さまも多い。ただ、今は『上司と部下』などの人間関係が希薄になっている。知っていただく機会をなかなか作れていない」と課題を挙げる。

 根幹は変わらないながらも、店を長く続けるため、お客との接点を増やすことに最近は注力している。例えば、ショーケースだ。これまでも、縦に細長いタイプのショーケースは店頭に置かれていた。しかし、展示できる商品が少なく、商品の魅力を生かし切れていないと考えていた。そこで、十数年前に調理の担当者らと話し合い、より大きく多くの商品を展示できるタイプにリニューアルした。道を歩いている人の目に付きやすくなり、売り上げも徐々にアップ。土日などで特に効果が現れ、最終的にはリニューアル前の2倍近くにまで伸びたという。また、サラリーマンとの接点を増やすために会議スペースを導入したり、コンセントやWi-Fiを導入したりもしている。

ショーケースは2号店にも。道行く人の目を引く仕掛けだ
自慢の商品が所狭しと並ぶ

 喫茶店にとって厳しい状況が続く中、長らく営業を続けてこられたことについては、「自社の保有するビルに出店できたことが、大きな理由。喫茶店の多くはロケーション勝負。良い場所に出店するには、高い家賃がかかる」としながらも、こうした「変わらない」ことに対するお客の信頼も長寿の1つだといえるだろう。

 効率を追い求め、より安く商品を提供することがビジネスの基本だとするならば、珈琲西武はその逆を突き進んでいる。しかしながら、多くのお客の支持を得ているのも事実だ。街中に同じような見た目のチェーン店が多く立ち並ぶようになっている中、昔ながらの個人店などが生き残っていくためには、こうしたある意味で「頑固」な姿勢が必要なのかもしれない。

他企業とのコラボも実施
どこか懐かしい空間
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