「無駄なことをやり続ける」 喫茶店不況の中、創業55年のレトロ喫茶が人気のわけ1964年から2020年へ(4/5 ページ)

» 2019年10月28日 06時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

2020年のオリンピックを新たなきっかけに

 今回2号店を開いたのは、2020年に東京でオリンピックが開催されるからだという。珈琲西武がオープンした1964年は、東京オリンピックが開催された年でもある。これについて、村山氏は「日本が復興で盛り上がり、最も元気があった時代の1つ。そこに東京オリンピックが開催され、当社としても1つの節目を作ることができた」と話す。「2020年に再び東京でオリンピックが開かれることになり、『珈琲西武として新しいことをやってみよう』となり、2号店をオープンした」。提供されるコーヒーカップの裏には「1964」と刻み、ソーサーには「2020」と刻まれている。

 同グループは、創業者が1945年に始めた靴の販売や飲食業にルーツを持つ。戦後の復興時代に必要とされた、スマートボールやキャバレーなどの娯楽業を展開し、成長を続けてきた。復興の流れの中、新宿が盛り上がっていた時代に珈琲西武はオープンした。

1964から2020、そしてその先へ

 「オープンした当時は復興が落ち着き始めて、生活をより良くしていくという流れがあった」と村山氏。社会に「復興」という重しがなくなり、「楽しむ」へと人々の関心が移りつつあった時代だという。当時は新宿三丁目周辺に数多くの喫茶店があったというが、今ではその数は大きく減少している。

 目まぐるしく変化を遂げる街の中で、珈琲西武はどのように変化をしてきたのか。村山氏に聞いたところ、「商品やサービス自体は昔から大きく変わってない。むしろ変わったのは外部環境の方だ」と話す。「その時代のムーブメントに合わせて店作りをしていたのでは、時代が変わったらダメになってしまう。『これが良い』と思ったものを突き通せば、成功する可能性も高まるはず」。

 例えばメニュー1つとってもそうだ。珈琲西武の看板メニューともいえる自家製プリンのプリン・ア・ラ・モードは、オープン当時には「質より量」(村山氏)という世相に支持され、人気を博した。1つの皿の中にプリンや果物が所狭しと並びボリューム感のある商品は、今でも変わらず存在する。しかし、時代を経ることで、単に「量」ではなく「質」も評価されるようになった。また、見栄えもすることから、最近では若い女性のお客も増えてきているという。

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