「無駄なことをやり続ける」 喫茶店不況の中、創業55年のレトロ喫茶が人気のわけ1964年から2020年へ(2/5 ページ)

» 2019年10月28日 06時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

1杯600円は安い?高い?

 大手喫茶店チェーンでは200円代でコーヒーを提供する店もあり、コンビニでは100円で買うことができる。ワンコインでコーヒーを味わえる時代に、1杯600円はやや高い価格だといえるかもしれない。

 珈琲西武の運営元である新宿メトログループに属する三信商事(東京都新宿区)の村山拓氏は「確かに『高い』という受け止め方ももちろんある。しかし、商品だけではなく、『時間』も売っている。コーヒーを飲むだけでなく、おしゃべりをしても良いし、新聞を読んだり本を読んだり、仕事をするのも良い」と話す。確かに、店内の椅子はソファ調になっており、座り心地が良い。ゆったりとした音楽もかかっており、居心地が良い空間が形成されている。

レトロな空間が広がる
創業者の保有していたという柱時計も空間のアクセントに

 こうした空間の根強いリピーターも多い。かつては今以上に常連客も多く、来店すると利用する席もスタッフの中で“暗黙の了解”のように共有されていたという。常連客同士のコミュニティーも形成されており、常連の1人が来ていないと他の常連が心配する、というようなこともあった。2号店も、オープンからまだ日が浅いが既にそうした席ができている。また、人材の確保にも良い作用をもたらしている。一般的に人気が低いとされる飲食業だが、アルバイトの募集をした際にはすぐに埋まってしまうほどの人気だという。「もともとお店のファンの方が応募してくるケースも多い」(村山氏)といい、ファンであるがゆえに目的意識も高く、働くことに誇りを持ったスタッフが日々サービスを提供している。

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