日本国債に“元本割れリスク”? 財務省は「元本割れなし」主張新連載・古田拓也「今更聞けない金融ビジネスの基礎」(2/4 ページ)

» 2019年11月01日 07時47分 公開
[古田拓也ITmedia]

 この点につき、経済アナリストの森永康平氏は「基本的に国が言っていることは正しい」と述べる。

 つまり、財務省ページで述べられている「元本割れなし」とは、発行元の国が元本での買い取りを約束している金融商品であると示しているに過ぎないということだ。この意味においては、森永氏も「日本国に何かがない限りは、国が補償することは間違いない」と述べている。

 一方で、それは「金融機関としての保証ではない」と森永氏は釘(くぎ)をさす。いくら国が支払いを約束するといっても、個人向け国債の発行体でない金融機関は、国の主張を鵜呑(うの)みにすることはできない。仮に、国の信用状況や財政状況が悪化したり、万一破綻したりすることなどあれば、国による元本での買い取りや利息の支払いは滞り、元本を割れてしまうということだ。

 大手信託銀行の窓口担当者も、「元本割れリスクをどこまで厳密に捉えるかによって表記が異なる」と説明する。

 なお、財務省が発行している個人向け国債のチラシには信用状況の悪化リスクが言及されており、国側でも、掲載媒体に応じて表記が若干揺れていることも分かった。国債というと元本保証というイメージが強いが、各所でいまいち煮え切らない表記となっている。その背景にはどのような要因が存在するのだろうか。

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