日本国債に“元本割れリスク”? 財務省は「元本割れなし」主張新連載・古田拓也「今更聞けない金融ビジネスの基礎」(4/4 ページ)

» 2019年11月01日 07時47分 公開
[古田拓也ITmedia]
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元本保証型商品に隠れたインフレリスク

 インフレリスクとは預金や国債といった、現金に近い性質を持つ金融商品が、物価の上昇によって価値を失ってしまうというリスクである。

 物価の上昇率よりも、運用している商品の利回りが小さければ、10年後に1万円が手元に戻っても、その1万円と利息では、10年前と同じものは買えなくなってしまう。

 足元では、日本銀行が年率2%の物価上昇を目標として掲げているが、これが実現された場合、お金の価値が年率2%で目減りすることを示している。そう考えたときに、利回りが物価上昇率未満の金融商品に資産を預けてしまえば、実質的な元本の目減りが発生する。

 元本が保証され、年率2%を達成できる金融商品はほとんどないといっていい。そうすると、今後インフレーションを見込むのであれば、資産構成を現金や国債などから、金などの実物資産・株式・不動産といった資産に一定程度振り分けて、リスクをコントロールし、物価上昇に強い構成にしていく必要がある。

 政府が、つみたてNISAや個人型確定拠出年金(iDeCo)といった資産運用に税制優遇をもたらす政策を取っているのも、今後の物価上昇に家計が耐えられるような資産構成づくりをサポートするという意図があるのではないだろうか。

 過度に元本を守ろうとして損害を被ってしまえば元も子もない。元本保証型の商品を語る上では、信用リスクだけでなく、インフレーションリスクまで踏み込んだ理解が求められる。

筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士

中央大学法学部卒業後、Fintechベンチャーに入社し、グループ証券会社の設立を支援した。現在は法人向け事業コンサルティングを行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。

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