焼鳥日高のメニューに関して分析していきます。
メニューカテゴリーを見てみると、鳥串・豚串は全部で15アイテムありますが、これはタレと塩を別々に表記しているためで、実際のアイテム数は8です。これは焼き鳥店としては多くない、むしろかなり少ないアイテム数といえます。このように、アイテム数を絞り込むことでオペレーションの軽減を図っていると見られます。また、温菜(温める料理)が6アイテムなのに対して、冷菜と揚げ物の合計アイテム数が20となっており、フードメニュー全体の約49%を占めています。ここにオペレーション軽減のポイントがあります(これらの計算からは、当日のおすすめ商品を除いています)。
揚げ物に関しては、冷凍したものや自社のセントラルキッチンで加工した食材を自動温度調節機能が付いたフライヤーに入れれば簡単に調理ができます。冷菜に関しては同店の冷蔵ショーケースを見ると分かるように、ほとんどのメニューが1人前ごとにお皿に盛りつけてあります。そして、ラップをかけてスタッキング(重ねて保管すること)しているので、オーダーが入ったら冷蔵庫から出すだけで提供できます。逆に手間がかかる温菜(温める、炒める、焼く工程が必要)などの商品アイテムは極力減らしているのです。実際に店舗を見ていると、手が空いたスタッフは常に食材を計量して、お皿に1人分ずつの料理を盛る「スタンバイ作業」を行っています。こうした事前準備により、ピークタイムの提供時間短縮や、時給単価が高い深夜時間帯の少人数営業を可能にしています。
さらに、会計は自動釣銭機能が付いた自動ドロワーレジとなっており、アルバイトスタッフでもお店の金銭管理ができるようになっています。外国人スタッフは日本のお札や釣銭に慣れてないケースもあるため、こうした自動釣銭機能は今後さらに重要になってきます。
食材や備品の発注に関しても、自社専用Webサイトからインターネット経由でアルバイトスタッフでも簡単にできるようになっています。
一方で、このように徹底した省人化モデルに対しては「お客さまの満足度を下げるのでは?」という意見もあります。しかし、満足度というのは、そのお店へのお客さまの期待度や客単価などとも関係しており、省人化しているからといって満足度が必ずしも低くなるとは限りません。実際に、同店への口コミを各種Webサイトなどで確認すると「店内が清潔」「店員さんもテキパキしていた」といった高評価が目立ちました。私も実際にお店を利用しましたが、スタッフの方の対応も良く、お店の衛生状況に関しても日高屋グループのチェックシートなどが導入されており、とても良い状態でした。
一昔前まで、飲食業界では社員の残業などで業務を賄ってきた側面が強かったです。しかし、今後、店舗拡大を行っていくためには「省人化経営へのシフト」は必須です。
省人化経営モデルを構築するには、IT化だけでなく、(今回の焼鳥日高の例でいうと)タッチペン式オーダーや自動釣銭機能レジ、Web発注システムなどが必要です。そして、無駄を徹底的に省く業務改善の視点が重要となります。
今までの慣習にとらわれない「聖域なき改革」。これが令和時代に生き残ることができる飲食店の必須条件です。
三ツ井創太郎
株式会社スリーウェルマネジメント。「飲食店年商10億円最速突破経営塾」を主催。大学卒業と同時に東京の飲食企業にて店長などを歴任後、業態開発、FC本部構築などを10年以上経験。その後、東証一部上場のコンサルティング会社である株式会社船井総研に入社。飲食部門のチームリーダーとして中小企業から大手上場外食チェーンまで幅広いクライアントに対して経営支援を行う。2016年に飲食店に特化したコンサルティング会社である株式会社スリーウェルマネジメント設立。代表コンサルタントとして日本全国の飲食企業に経営支援を行う傍ら、日本フードビジネス経営協会の理事長として店長、幹部育成なども行っている。著書の「飲食店経営“人の問題”を解決する33の法則(DOBOOK)」はアマゾン外食本ランキングの1位を獲得。
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