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嫌いな上司を黙らせる2つの方法愚痴や告げ口はNG(3/3 ページ)

» 2019年11月07日 05時00分 公開
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社内に広がった高評価

 全てを思い出した先輩は私にわびてくれた。そして、会社に戻り次第、部長に全てをありのまま報告してくれたようである。あとは笑い話なのだが、その一連の経緯をとても愉快に感じた部長は、関係のない他の部門長や役員にまでその話を吹聴しだした。その後、私の元には「土下座侍(さむらい)、でかしたぞ!」などと茶化す内容のメールが社内から続々と届いた。そのころには、私が職場に抱いていた嫌気も不思議と消え失せていた。

 会社に貢献したことを証明し、それをベストな形で表明することで敵でなく味方を増やさねば、上司はあなたを嫌い、あなたも上司と会社を嫌ってしまう。その結果、出社を控えたプライベートの時間まであなたは不幸になってしまう。たとえ転職をしてもその構造は変わらない。

 ちなみに、被雇用者が職場でいじめられ、泣き寝入りしてしまうのは、時代的にも非常にもったいない。日本社会で、働き方改革が叫ばれて久しい。労働人口が減少する日本で、企業の人材不足は深刻を極めている。企業経営者としても、優秀な人材を引き寄せてつなぎとめるような職場環境を確保することは最優先事項だ。

 そして今後は、投資家も企業の労働環境に強烈な関心を寄せることが予想される。AIやバイオといった知識経済が社会を支配していく中で、企業価値の大部分が人的資本に根差すようになり、労働者の満足度合いと福利厚生が、投資家にとって財務指標と並ぶ重要評価事項になる時代が到来しつつある。結果で実力を示し、現実社会でしっかり通用する意思疎通能力を身につけた人材は、今後ますます厚遇されるよう、企業も社会も、そして資本市場までも変わっていっている歴史的転換点に、今われわれがいる。

 この歴史的潮流のなかで、嫌いな上司に耐え切れないとき、あなたがストレスを抱えたまま職場以外でそのはけ口を探したり、安易に離職を考えたりしないことを私は願う。まずは目の前の仕事に誠実に取り組み、成果を証明し、極力賢明な表明をすること。そして、それらの実践がたやすくなくても、何よりそのマインドセットをもつこと。自分がよい仕事をできるよう、自分が好きと思える仕事を探求し続けることも重要だろう。

 「月曜朝の出勤が楽しみで、日曜の夜寝るのが待ち遠しい」――これを真顔でいえる、生活の糧と私的情熱のクロスオーバーこそが私の感じる最高の人生のカタチである。1人でも多くの読者の方々がそのクロスオーバーを実現できることを祈念する。

著者プロフィール

金武偉(キム・ムイ)

個人投資家の視点で上場企業ガバナンスについて発信中。投資家。ゴールドマン・サックス証券出身。元ニューヨーク州弁護士。マンティス・アクティビスト投資1号(株)代表。ミッション・キャピタル代表。

Twitter:@BestGovernance(ハンドルネーム:投資家ウィル)

blog:個人株主ガバナンスを考えるブログ


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