「売る人」がいないJ-REIT 好循環の中、リスクはどこに?(2/4 ページ)

» 2019年11月11日 07時04分 公開
[斎藤健二ITmedia]

トレンドができると1年は続く

 一方で、17年のタイミングで「好調になる芽が出てきた」と秋山氏。苦しいタイミングでJ-REIT各社は、自社株買いや資産入れ替え、株式分割などを行ったり、フィーの水準も業績連動型に変えたりしてきた。

 こうした取り組みは18年に実を結ぶ。毎月分配投信問題も騒ぎが収まり、資金流出も止まった。市場が見直された結果、J-REITは好循環に入る。資本調達がやりやすくなり、増資して物件を買い、結果分配金が伸びてきた。

 「J-REITはビジネスモデルが単純なので、いったん悪循環に入ると悪循環が続くが、好循環に入ると好循環が続く。少なくとも一回トレンドができると1年くらいは続く」

東証REIT指数(分配金込み)の推移(三井住友DS資料より)

シェアオフィスの失速はオフィス市場に悪影響を与えるか

 ではJ-REITでどんな数字に着目すべきだ。一つは、賃料の伸びと空室率だ。現在、特に東京では史上最低レベルまで空室率が下がっているが、その理由の1つはシェアオフィスだと秋山氏は説明する。

東京都心5区の空室率と平均賃料

 「日本でもシェアオフィスの貢献があった。つまりWeWorkだ。そのWeWorkがこの状態(IPOに失敗し事業の立て直し中)。シェアオフィスの失速が、オフィス市場に悪影響を与えるといわれている。日本の場合は比率が小さかったが、多少の悪影響は出てくる」

 シェアオフィスの影響だけでなく、景気循環の中でも、今後空室率は上がっていくと秋山氏。ただし、オフィス市場では4%前後くらいが、貸し手と借り手の均衡といわれているが、上がっていくとしても4%まではいかないと見る。

 賃料についても、「がくんと下がるフェーズも考えにくい。現在上昇ペースがスローダウンしているが、下がるとしても、なだらかだ」と、基本指標は安定という見立てだ。特に、外需企業は世界経済が厳しくなると業績も厳しくなるが、IT系の内需系企業は大きな影響を受けない。その拠点である東京の渋谷の賃料も上がっているという。

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