さらに厳しいのが正社員に支払われている諸手当も非正社員に同じ額を支給しなければならないことだ。ガイドラインでは以下の手当の同一の支給を求めている。
この中には家族手当や住宅手当などは入っていないが、こうした生活関連手当は仕事の内容や出来不出来などの中身とは関係なく支払っている以上、正社員だけに支給し、非正社員に支給しないというのは合理性に欠ける。自社の正社員の就業規則に明記された支給要件に基づいて同額の手当を支払う必要がある。
ちなみに家族手当の支給要件は企業によって違うが、本人が世帯主であるかどうか、配偶者(妻)の収入、子どもの年齢、老親の有無などによって決まる。例えば配偶者手当の支給要件は「年収103万円以下」という税制上の「配偶者控除」が適用される基準と同じ要件にしている企業も多い。それから外れる主婦パートには支払う必要はないが、近年では家計を支える男性契約社員やシングルマザーなども増加している。正社員と同じ家族手当の要件を満たす非正社員に支払うことはかなりの負担となる。
さらにガイドラインでは金銭的処遇以外についても同じにしなければいけないと明記している。例えば「食堂、休憩室、更衣室といった福利厚生施設の利用、転勤の有無等の要件が同一の場合の転勤者用社宅、慶弔休暇、健康診断に伴う勤務免除・有給保障については、同一の利用・付与を行わなければならない」としている。
同一労働同一賃金を巡る労働者と使用者の争いは最終的には裁判で決着することになる。しかし、自社の非正社員は何も知らないからと放置しておくと、後で痛い目に合うことになる。今回の法改正では非正社員が「正社員との待遇差の内容や理由」などについて使用者に説明を求めたら、使用者は説明する義務があることが盛り込まれた。
しかも使用者の説明に納得がいかない場合は、都道府県労働局の個別労使紛争を解決するための「調停」の対象になった。事業主が十分な説明をせず、調停でも物別れに終わり、訴訟になったら裁判所から正社員との「待遇差」は不合理と判断される可能性が高くなる。
すでに大企業の中には、法律施行前に正社員と非正社員の待遇差を解消する動きも出ている。日本通運は全国の支店で働くトラックやフォークリフトの運転手や事務職など約6000人の非正社員の賃金を正社員の水準まで引き上げる制度を19年4月から導入している。給与の引き上げだけではなく、結婚や家族や親族が死亡した場合の慶弔休暇も正社員と同じにした。
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