『倒産の前兆』を見抜くために――1日22社が倒産する中で知るべきは「成功」よりも「失敗の公式」あなたの会社は大丈夫? 『倒産の前兆』を探る【最終回】(2/5 ページ)

» 2019年11月27日 05時00分 公開
[森永康平ITmedia]
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銀行ごとに決算書が違う

――中小企業が資金調達をする場合、多くはエクイティファイナンス(株式発行による資金調達)ではなく、銀行による融資がメインになると思いますが、なぜ銀行は倒産するかもしれない企業を見抜けないのでしょうか?

丸山:銀行員の目利き力が落ちているという話がよく聞かれますが、それも一つの要因になっていると思います。昔はバンカーという言葉があって、融資を通じて企業を支えるという心意気もあり、経営者と深く対話をするために、現場にも通いました。しかし、バブル崩壊以降、企業の評価は財務分析といった数値面での判断が主流になってきました。

遠峰:最近では金融庁が「事業性評価」を推奨し始めていますが、その背景には数値面での判断だけではなく、企業の将来性も評価していきましょうということです。これが浸透していくには少し時間がかかると思います。

――企業の将来性に対して融資をするというのは、どちらかというとエクイティファイナンスにおける投資家のような発想ですね。従来の銀行のスタンスよりは、よりアグレッシブな印象を受けます。

遠峰:超低金利が続いていますから、銀行も多少はリスクを取って融資をして収益機会を得る必要がありますし、特に地方の金融機関においては地元の企業を支えていけなければ先行きは厳しいと思います。

丸山:金融庁が銀行融資を受けている企業に「銀行に要望すること」をアンケートで聞いてみたところ、「経営指導」が上位に来ていました。特に地方ではこの要望が顕著です。

――融資をして、さらに経営指導もするというのは、まるで投資先の経営に深く関与していく「ハンズオン型」のPE(プライベートエクイティ)のようですね。銀行が倒産の前兆を見抜けない、他の理由はありますか?

丸山:昔に比べて多行取引が増えて、メインバンクがどの銀行なのか分からないことが多いのも要因かもしれません。企業と銀行の関係が希薄になって粉飾決算に気付けないケースがあります。ひどい企業だと融資を申請する銀行ごとに決算書が違うんです。具体的にいえば、銀行によって借入金明細の内容が違うんですね。

遠峰:借入金を簿外にするケースもあります。もっと原始的な方法で、単純に借入金を少なく記載したり、複数の口座にお金を振り分けたりして分かりづらくすることもあります。

――それは、確かに見抜くのが難しそうですね。一方で、見抜けるケースというのはどのような場合なのでしょうか?

丸山:P/L(損益計算書)の支払利息の額から利率を計算して見抜ける場合はあります。現在、全産業平均の支払利息は1.4%ぐらいといわれていますが、借入金だけを少なく記載していて、支払利息はそのままにしていると、明らかに支払利息が高い状態に見えますよね。その場合は「簿外債務があるな」と分かるのです。

phot なぜ銀行は倒産するかもしれない企業を見抜けないのか?(写真提供:ゲッティイメージズ)

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