――これまで見てきた企業で印象に残っている会社はありますか?
丸山:(商品を宣伝した顧客に報酬を支払うといった「連鎖販売取引(マルチ商法)」が問題になった)ジャパンライフですね。消費者被害がマスコミで取り上げられてから、実際に破産するまではかなり時間がかかりました。その間、手形の決済ができなかったという情報があり、実際にそうなると大型倒産ということになるので、われわれは現場で社長を捕まえて、今後どうしていくかを(本人に取材をして)聞かないといけないのです。でも、ジャパンライフは自社ビルだったので、待合スペースもなく、寒い中を毎日(社員が)交代で張り付いていました。
会社の人間を捕まえては、社長が会社に来ているかを聞く。信用不安が出ている会社の今後の方向性というものは、(その会社の)社員に取材しても意味がないのです。経営責任のある人間に話を聞かないと、こちらも発表できないですから。
遠峰:ただ、実際に(ジャパンライフに)取材をしても、会社側は「ずっと会社を続ける」と言い張っていました。そもそも同社は破産するかなり前から信用不安情報があり、消費者庁から数回にわたる業務停止命令を受けるなど、業界では長く話題になっていました。
でも、ジャパンライフの被害者はある意味で同社の営業員に「洗脳」されてしまった人が多いようです。被害者には高齢者が多いのですが、被害届を出さなかった人も少なくないと聞きます。独居老人が同社の営業員を好きになってしまっているんです。自分の子どもぐらいの年齢の営業員が毎日(自分のところに)来て話を聞いてくれるからということがその理由です。騙(だま)されたと分かっていても騒ぎ立てない人が多かったのか……。被害の大きさを考えれば、もっと騒がれてもいい事案だったと思います。
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