「少しの酒は体にいい」を疑う新常識 安くてすぐ酔える“高アルコール”人気の陰で世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

» 2019年11月28日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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「短時間でパーッと」は要注意

 まずは「ビンジ・ドリンキング(Binge Drinking)」だ。ビンジ・ドリンキングとは短時間でパーッと飲んで盛り上がる飲み方を指す。アルコールは、長時間で飲むよりも短時間で飲むほうが危険であるという。「短時間に大量のお酒を飲むと、急激に血中アルコール濃度が高くなって脳や肝臓、すい臓などに障害をもたらします。多くの男性の飲み方がこれに当てはまると思われます。ビンジ・ドリンキングという言葉は、気を付けるべき飲み方として、知ってもらったほうがいいですね」(奥田氏)

 社会問題になっている一気飲みも、予期せぬ死につながることがあるので要注意だ。

 奥田氏によれば、もう一つ特筆すべきは、女性の飲酒は注意が必要だということ。「あまり知られていませんが、日本は世界で唯一、20代女性の飲酒量が増えている国なのです。世界では減少方向にあるのですが」と、奥田氏は指摘。特に20〜24歳では、女性は男性よりもアルコール摂取量が多いという。

 さらに、「女性の方が男性よりも、アルコールへの感受性は高いし、男性よりアルコールを代謝するのに時間がかかる」と言う。女性の体には脂肪が多く、水分量が少ないために、アルコール摂取時に女性のほうが血中濃度が高くなるのだ。

 アルコール健康医学協会のデータによれば、アルコールを大量摂取している男女を比べると、アルコール依存症を発症する年齢は、平均して男性が50代なのに対して、女性は30代である。女性の方が依存症になるスピードが早いらしい。また大量摂取を続けて肝硬変に移行するまでの期間は男性が平均20年だが、女性は12年だ。

 加えて、女性にとって、長期にわたる過剰飲酒は、乳がんや月経不順などの原因になることが分かっている。ちなみに男性は、勃起不全や睾丸萎縮をもたらすことがある。

 最近、麻薬などで検挙される有名人が後を絶たないが、アルコールだって人を「前後不覚」させる、日常に密接に関わる薬毒物の一つである。そんな認識を持っておくことも、ビジネスパーソンには求められるかもしれない。

 師走を迎えて、ぜひともアルコールとは上手に付き合いたいものだ。人生やビジネスを棒に振らないように。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最新刊は『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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