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重度障害で寝たきりでも働ける「分身ロボットカフェ」――親友の死、引きこもりの苦悩を乗り越えた吉藤オリィが描く「孤独にならない社会」障害とは「テクノロジーの敗北」(2/5 ページ)

» 2019年12月04日 05時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

OriHime-Dの誕生は亡き親友のアイデアから

 吉藤さんがOriHimeを最初に製作したのは2010年。24個のモーターがついた大型のものだった。その半年後にモーターが2個しかない小型のOriHimeを開発し、テレワークに活用していた。

 OriHimeによるテレワークで、吉藤さんの秘書として働いていたのが、親友でもある番田雄太さんだった。番田さんは4歳で交通事故により頚椎を損傷。17年に亡くなるまで、28年の生涯の大半を寝たきりで過ごした。

 盛岡から東京にいるOriHimeを動かして働いていた番田さんは、来客者を出迎えたり、見送ったり、お茶を運んだりなど、もっとやれることを増やしたいと考えていたという。16年のある日、2人で雑談するなかで「移動できるOriHimeを作ろう」というアイデアが浮かび、その日のうちにデザインを描き、模型を作った。それがOriHime-Dの原型となった.

phot OriHime-Dの最初のデザイン(吉藤さんのnoteより)

 「番田が秘書として働いて、給料をもらっていても、『それは番田さんだからできるんですよね』『オリィ研究所だからできるんですよね』と言われていました。確かに、特別支援学校に通う子どもたちがみんなテレワークで知的労働ができるかというと、まったく働いたことがなければ難しいですよね。それに生身の体がないと難しいコミュニケーションもたくさんあります。

 では、みんなが働けて、雇用する側の企業も働くことがイメージしやすい仕事はどんなことだろうと考えました。そのときに番田と話したのは、動かない小型のOriHimeだと、他の人が客を社内に誘導して、奥にいる番田が『こんにちは』とあいさつする形になるので、これでは秘書の方が偉そうだなと(笑)。そこで玄関に客を迎えにいくことや、コーヒーを持っていくことができるようにしたいと考えたのが最初です」

phot 発泡スチロールで作ったOriHime-Dの模型(吉藤さんのnoteより)

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