実際におでん販売を止めたというオーナーは、「廃棄はほとんど店(オーナー)の負担です。廃棄の多いおでんは赤字になりがちなので、うちではやりません」と言う。おでんを入れる容器もけっこう高い。
また、「おでんが秋冬の売れ筋」というのは本部目線でみた平均値の話だ。駅前かオフィス街か住宅地か、地域に1店しかないかコンビニがひしめいているか。立地によっても、店ごとに事情は変わってくる。
無断発注は論外だが、本部側がオーナーに強く推奨しておでんを無理に売らせ、大量の廃棄=食品ロスを出し続けるのも、お店にも消費者にも、そして環境にもやさしくない。「どの店にもおでんを」というのは本部の都合でしかない。
そこで思い出されるのが、筆者が以前行った竹増貞信・ローソン社長へのインタビューだ。「平準化で発展してきたコンビニに、地域性や店の個性をどう組み込んでいくかが重要だと考えています」(竹増社長)。
考えてみれば、「北海道から沖縄まで、同じコンビニチェーンならどの店もまったく同じものを同じように売っている」ことに、本部の管理上のメリットはあっても、客にとっての意味はない。
とはいえ、棚の99%以上を本部推奨商品で埋める「平準化」で発展してきたコンビニにとって、「地域性や店の個性をどう組み込んでいくか」は、難易度の高い課題にも思える。コンビニより先に壁に突き当たっている他の小売業態の取り組みも含め、幅広い視点からの模索が必要だろう。
北健一(きた けんいち)
ジャーナリスト。1965年広島県生まれ。経済、労働、社会問題などを取材し、JAL「骨折フライト」、郵便局の「お立ち台」など、企業と働き手との接点で起きる事件を週刊誌、専門紙などでレポート。著書に『電通事件 なぜ死ぬまで働かなければならないか』(旬報社)、『その印鑑、押してはいけない!』(朝日新聞社)ほか、共著に『委託・請負で働く人のトラブル対処法』(東洋経済新報社)ほか。ルポ「海の学校」で第13回週刊金曜日ルポ大賞優秀賞を受賞。
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